ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

一体どんなことになるというのか

産経新聞web版でこんな記事。

外国人介護福祉士在留資格を 自民特別委
 自民党外国人労働者等特別委員会は18日、現場に外国人の高度技能者の就労を拡大させる新制度創設などを盛り込んだ、外国人労働者受け入れに関する方針をまとめた。
 日本の介護福祉士の国家資格を取得した外国人の在留資格を認めることや、留学生が在籍する大学側に一定の責任を求めた上で、卒業後も就職活動を続けられるよう在留期間を1年延長することなどを提言している。
 在留資格は現在、弁護士やデザイナーなど専門性の高い職業に認められているが、方針は外国から優秀な人材を導入することは、経済社会の活性化に寄与すると定義。各産業の現場において専門性や技術に優れた外国人の新たな受け入れ制度を創設する、としている。
 党内で慎重意見が根強い単純労働者の受け入れについては「今後も十分慎重に対応する」とし、導入に歯止めをかけた。また、日系人の在留更新要件に社会保険への加入状況など新たな項目を加えることも検討する。
 一方で、外国人が生活しやすい環境づくりも必要だとして、住居の確保を容易にする身元保証制度の整備なども進める。(07/18 22:01)

一方読売新聞はこんな具合に記事にしている。

自民特別委、外国人労働者受け入れ拡大方針決める
 自民党の「外国人労働者等特別委員会」(木村義雄委員長)は18日の会合で、外国人労働者の受け入れ拡大を目指す方針をまとめた。政府に対し、一定の日本語能力や技能を持つ「優秀な人材」を受け入れる制度の新設を求めた。特に日本の介護福祉士資格を取得した外国人については就労を認めるよう明記した。単純労働者の流入につながっていると指摘されている外国人研修・技能実習制度に関しては、「定着化の防止等に留意」しつつ、実習期間を現行の3年間から5年間に延長するとした。
 方針にはこのほか、<1>外国人が急増している市町村への財政支援<2>公立学校における外国人子弟への日本語教育の実施<3>外国人労働者問題に取り組む関係省庁会議の設置??なども盛り込んだ。同委員会は中川政調会長らの了承を得たうえで、政府に詳細の検討と必要な法令の改定を求める方針だ。
(2006年7月18日18時42分 読売新聞)

ここのところ新聞をちゃんと読んでいなかったものだから、見落としていた。介護福祉士についてだけの議論ではなく、外国人労働者の受け入れをどうしていくのか、「広く国民の皆様からのお考え」を自民党が募集しているらしいと云う話は漏れ聞いた。この自民党の特別委員会が発表したオリジナルを見ていないので、なんとも云えないが、産経新聞の記事は甚だ具体的な中身を書いている。一方読売新聞は淡々とただ伝えているだけだけれども、くっきりと表現している。
 私のいわゆる直感で語ってしまうと、さすがに自民党らしく、まさに財界にこびへつらうアイディアの数々であるといって良いだろう。例えば、外国人が介護福祉士の資格を取った場合には在留資格を与えるということは、いよいよ介護の現場は安い労働力を外国からアンフェアな価格で買い取るということに他ならない。そうして高齢社会に備えるというわけである。そのために現在の介護の現場における人件費を改善することができない。今のままのレベル程度にしておかないと外国人を導入する意味がなくなるからだ。それでどんなことが起きるのかといえば、とても自立した家庭を築くことのできない給与水準に辟易して日本人の介護労働者の現場への参入を妨げることになる。妨げてなんかいないという反論があったとしても、現実にはこの給与水準で良いと考えている社会そのものが大きな間違いであることには変わりがない。これは何も介護業界だけの話ではない。教育業界でも、職員をどんどん人材派遣、アルバイトにきりかえ、正職員の数を削減していくことによって成り立つ。資源はどんどんハードにむかう。
 人口が減り、労働人口の相対的割合がどんどん減少していくと労働力が足りなくなって労務費が上がるのかと思ったら、こうして低減してしまうということなんだろうか。
 そして、外国人研修・技能実習制度である。現行の三年間というのは最初からの期間ではなかった。「現場からの要望として滞在時間が短すぎるから」伸ばすとして、三年間になったものである。それをここに来てまたまた延長して五年間としようというものである。「研修・実習」で五年間も必要とする技術とはいったい何か。国へ持って帰って意味を持つ技術の習得に五年間もかかる技術とはいったい何か。現実的にはこの「外国人研修・技能実習」の在留資格はまさに未熟練労働者導入のための方便にすぎない。ここでわざわざ「定着化の防止等に留意」と書かれているのは、ことほど左様にこの在留資格で入国して、そのまま逃亡して日本国内で不法労働者と化す研修・実習外国人が跡を絶たないからである。その防止のために会社がパスポートを預かる、あるいは給与を全部払わずに天引き貯金として預かるという非人道的な手段を弄するケースが様々に見られて問題は拡がっていた。それでも日本に正式な在留資格で出稼ぎにこられるわけだから希望者は減らない。
 第三のポイントについてはこれまでも語られてはいた。これから先も「語られる」だろう。しかし、それは現場への押しつけに他ならない。骨太の方針の中でどんどん斬り捨てようとする地方の現場への対応がこれから充実することができるのかといったら実際にはほとんど何も改善されないだろう。窓口の担当者が困るだけである。
 いや、むしろ現場で発生するこうした事態を生む背景には安い労働力を利用して利益を上げ続けようとする企業に資する臨床的対応にすぎない。その点ではこれまでの「財界に資するがため」の対応と比較して全く革新的なアイディアではない。むしろできるだけ抜本的な対応をせず、こうした枠からはずれた外国人の犯罪者化についての警鐘を鳴らし、「人間として」遇するよりも「安価な労働力」として認識することで区別化しようとする路線そのままといって良いだろう。私はこれこそ受益者負担として法人税の改正をはかる必要があるのだろうと思う。
 それにしてもただただ淡々と告げるだけでは意味を持たないとしても、それでもきちんと整理している読売となんとも的はずれな産経の切り口を見ていると、やっぱり安い新聞には問題あるのかなぁと的はずれなことを考える。東京新聞のレベルには私は感心しているし。