昨日の帰りは友達と一緒だった。その前に彼と今や公的空間における第三者に対する言葉の投げかけは喪失されてしまったのだねぇと語っていた。
電車に乗るやいなや私たち二人が携帯電話の電車の中での使われ方について話していると中途半端な座り方をしていた中年のおじさんがやおら立ち上がって向こうの車輌に移っていった。どうも携帯電話を使っていたみたいだった。
そこにできたのは二人半分程度のスペースである。どうしてそんな中途半端なスペースができるのかというと、今座っている人たちが中途半端な間隔を開けているからである。私たちは二人分のスペースにきっちり座った。するとそこには一人座るにはちょっと中途半端なスペースができた。次の駅からおじさんが乗ってきた。そのおじさんはその半分ちょっとのスペースに自分の身体を滑り込ませる。今座っている人たちがきちんと座ればそこには多分一人座れるだけのスペースを作り出すことができるはずである。しかし、彼は「失礼します」とか、「座らせて下さい」といった言葉の投げかけをしなかった。彼にいわせれば、もう一人座れるはずであり、それをしないここまで座ってきた連中に責任があるのだから、私はその権利を主張しているだけだ、というだろう。
しかし、そこに座っている人は「なんかきっかけを与えてくれれば私の横にあるこの小さな隙間を詰められるんだけれど、私ひとりでこの左側だけを詰める行為はこの左側のおっさんに誤解されちゃいそうだからいやなんだよねぇ」と多分思っていたわけだ。そこにそのおっさんが「済みませんねぇ、座らせて下さい」といえば2-3人一斉に詰めることができる。このタイミングをあげてくれると良いなぁ、と思うわけ。
私はそんなスペースがあると必ず「座らせて下さい」と声をかける。それでも、詰めないバカはやっぱり若い男に多い。なんであんなにふんぞり返っているんだろうかと思ったら、昨日のトリビアを見ていたら大きくまたを開いて座っている男を格好いい、というバカ娘が現存するのであった。
ちなみに電車やバスの中で携帯電話をとりだして平気で喋っている中には、携帯電話の機能をマスターできない年齢層がその半分ほどを占めていそうな気がする。大体マナーモードにどうやったらなるのか、どうやったら元に戻すことができるのかを全く知らない。やっぱり乗り物は電磁シールドするべきだと私は思う。
そんなことを思いながら朝の電車に乗ると、今度はこの糞暑いのにスーツを着て襟に外資系の会社のバッヂをつけた30代の男が二人、三人分の座席を占めている。いつものように「失礼します」と声をかけてぴったりと隙間を空けず座る。その二人のうちの一人がやおら電話を耳にして顧客に「昨日いくらでました」と明らかに株を動かした結果を報告する。びっくりして私が見つめてもどこ吹く風である。通常はそんな視線を送ると絶対に私と目を合わせまいとしながらあっちを見たりこっちを見たりするが、こいつは全くどこ吹く風である。てめえの商売のために周りを引きずり込むな、といいたいのにいえない勇気のない自分が情けない。やっぱり電磁シールドにしたいなぁ。