ほぼ足りてまだ欲 その先

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名張再審請求

 結局名古屋高裁の再審開始判定に対する検察の異議申し立ての結果、認められないという判断が下った。争点はいくつかあった。
 ひとつは犯行に使われた農薬。奥西死刑囚の自白によれば「ニッカリンT」が使われたと云うことになっているが、再審請求理由の中では「ニッカリンTであれば当然検出されるはずの物質(トリエチルピロホスフェート)が飲み残しのブドウ酒から検出されていない」と主張されていた。しかし、今回の判断では「混入されたのがニッカリンTであってもトリエチルピロホスフェートが検出されないこともあり得ると判断され、使用された農薬がニッカリンTでないとはいえない。毒物は有機燐(りん)テップ製剤であることが判明しており、有機燐テップ製剤であるニッカリンTが使用された可能性は十分に存する」と結論づけられている。この件に関しては検察側の「加水分解されるから検出されなかった」とするのに対し、弁護側は「成分の加水分解される速度は遅く、農薬は別物」と主張していたが、門野裁判長は「(成分が)検出されないこともある」と判断したのだという。
 この辺の判定についてはもちろん化学の専門家の判断というものがあったのだろう。その辺は今の所まだ報道記事だけでは明らかでない。
 もうひとつは奥西死刑囚がこじ開けて農薬を投入したとされる葡萄酒の一升瓶の王冠である。「王冠の足の折れ曲がりは人間の歯ではなく栓抜きのような器具を使用したことを証明したもので、「歯で開けた」と供述したとされる奥西死刑囚の自白の信用性を否定する」という点だ。これに対しては「本件ブドウ酒瓶のものではない可能性があるというが、本件の瓶に装着されていたものに間違いない」「証拠物の状況からは公民館での開栓が間違いなく最初の開栓で、偽装的な開栓があったとは認められない」としている。
 また、自白の信憑性については「自白は事件直後の任意取り調べの過程で行われたもので、自白を始めた当初から詳細かつ具体性に富む。勝手に創作したような内容とは到底思われず、証拠物や客観的事実に裏打ちされて信用性が高い。原決定は、自白には変遷があり迫真性に欠けるというが、判断は一面的である」と結論づけている。
 この事件は奥西死刑囚が妻と愛人(両名ともこの事件の犠牲者となって死亡)との三角関係を清算しようとしたといわれていて奥西死刑囚は心証的には非常に不利な立場にいて、門野裁判長は「元被告以外の者にぶどう酒に農薬を混入する機会がなく、状況証拠によって犯人と認定できる」と判断しているというものである。疑わしきものを疑わしきゆえに判断している、という印象が否めない。いずれにしても凶器とされている農薬の妥当性についての今回の判断理由を知りたい。
毎日新聞061226 11:21(最終更新時間061226 11:41)<名張毒ぶどう酒事件:再審取り消しに「戦いは続く」弁護団
毎日新聞061226 10:27(最終更新時間061226 12:07)<名張毒ぶどう酒事件:再審決定取り消し 名古屋高裁
Asahi.com 061226 12:09<再審の扉なぜ開かぬ、怒る支援者ら 名張ブドウ酒事件>
Asahi.com 06122612:22<名張毒ブドウ酒事件、異議審の決定理由要旨>
(共同)東京新聞(061226 12:15)<奥西元被告の再審取り消し 名張毒ぶどう酒事件で決定>