日付が変わった頃にテレビの下に貼ってあったメモに気がついてテレビをつける。なんのメモだったかもう忘れてしまっていたんだけれどもWOWOWでやっていたのは「The Corporation」というカナダの原作者による映画だった。2004年の制作だということで原作はジョエル・ベイカンの「ザ・コーポレーション:わたしたちの社会は「企業」に支配されている」(早川書房)。取り上げられている項目は:
- ボリビア、コチャバンバ紛争〜水道民営化を阻止した民衆運動〜
- ホンジュラスにおける労働搾取工場の実態
- インターフェイス社の環境への取組み
- ロイヤル・ダッチ・シェルの公害問題
- フォックス・テレビ内部告発のてん末
- ギャップ社の不当労働疑惑
- 遺伝子組み換え食品に反対するインドの環境保護活動家
コメンテーターに登場する人びとのそのバライアティーには驚かされる。確かに米国のフィルム産業はこうした作品も作られる面があるなぁと思っていたら、なんとこれはカナダの作品。カナダは時に驚くほど先進の価値観を見せる。日本で公開されたのだろうが私は全く認識していなかった。DVDは2006年6月に発売になった様である。
コメンテーターにはノーム・チョムスキー、ナオミ・クライン、オスカー・オリブラ、チャールズ・カーナハン、レイ・アンダーソン、マイケル・ムーア等々多士済々である。企業側もこの映画に出演してコメントしているが、どうしても旗色が悪い。この映画の凄いところは情報収集のために人材開発会社を装って被用者から情報を取る話、投機トレーダーのとにかく金を儲けて何が悪いコメント等がきっちりと収録されている点。メディア王FOXがモンサント・ケミカルに関するドキュメントを握りつぶす徹底ぶり、ファイザーのSVPが見せるお調子者ぶり、マイケル・ムーアがインタビューするナイキのトップの対応、ベクテルのいつものやり方といった事態を全く歯に衣着せずに明確に、淡々と語っているところである。
この種の話が取り上げられると必ずやってくるのは、この世の中はこうした企業活動なくしてはもう動くことがないのだから、それがいやならお前はこの社会から出て行けという反応だろう。確かに安い衣料を買って暮らしている。安い食材を入手して食べている。それがそのまま途上国の労働者の格安賃金によって成り立っている。つまりそうしたものを買う奴がいるからそれを売る企業が存在するという考えである。しかし、この辺を論点として語るのではあまりにも次元が低すぎる。なぜならこれは「鶏か玉子か」の議論にしかならないからである。(そういえば冷蔵庫の中の玉子が残り少ないなぁ)。ベクトルのコチャバンバにおける水の独占、あるいはバイオ産業による自然界に存在する未発見のものを特許として認めさせてしまうという形での独占が進行することに対して私たちは無知でいてはならないと確信する。
企業という法人格を認めることによって間違いが起きているという指摘は正しいことだと思い始めた。株主、経営者にとって究極の目的である投資の拡大再生産は純粋に儲けそのもののみに価値を見いだしている。それと人権、生命、倫理といった価値観との共存があり得るのだろうか。法人格を認めることを否定することによってそれは再認識されることになるのだろうか。Interface社のRay Andersonの考えは実際米国においてどの様に捉えられているのだろうか。世界一の広告バイヤー企業“イニシアチブ・メディア社” 副社長のLucy Hughesの薄ら笑いを浮かべながらのコメントは薄ら寒さをすら思う。
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「ザ・コーポレーション」上映+田中優氏講演会
日時:2007年1月21日(日)12時開場 12時30分開演
場所:町田市民フォーラム3階ホール(042-723-2888)
主催:町田でドキュメンタリー映画を上映する会(まちだ大福帳のサークルです)http://www.geocities.jp/daihukucho/
前売り (地域通貨花が使えます)大人1,000円(900円+100花) 中高生500円(400円+100花)
前売りチケット取り扱い店 久美堂本店2階(町田駅カリヨン広場近く)
当日券 大人1,200円 中高生800円 ※保育あり。完全申し込み制(2歳〜未就学児)
※連絡先080-5091-1269/090-4396-1628 agehacho@k7.dion.ne.jp
<田中優氏> 『未来バンク事業組合』理事長、『日本国際ボランティアセンター』理事