ほぼ足りてまだ欲 その先

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抜本的対策が急がれる介護業界

 厚労省は「コムスン」(東京都港区)の全国の事業所の新規指定と更新を、2011年12月まで行わないよう都道府県に通知したと各紙が報じている。2007年5月末現在、同社の介護事業所は2081事業所(介護予防サービス事業所除く)あり、更新が5年間禁じられるため、来年度には1424事業所に減少、最終的には、2011年度に426事業所にまで減る。利用者は約6万5000人いるといわれている。(2007年6月6日 読売新聞)
 コムスンは指定申請時から、虚偽の人員配置を届け出る、ヘルパーの不足や介護報酬の過大請求など法令違反を行っていたと以前に読売新聞(2007年4月10日)で報じられており、この時には「ニチイ学館」(千代田区)、「ジャパンケアサービス」(豊島区)にも勧告、指導が行われていた。ところがコムスンは都が3事業所の指定取り消し処分の手続きに入る当日、3事業所の廃業届を提出した。この時、監査結果を通知すると予告して2007年3月23日に樋口公一社長らを呼び出したところ、同日朝に廃業届が出されたという。3事業所のうち、奥戸事業所は約1か月前に廃業されたばかりの東新小岩事業所の利用者の受け皿にもなっていた。このため、同局幹部は「処分を逃れるための廃業ととれる」として取り下げるよう説得したが、同社は聞き入れず、都は受理せざるを得なかった(2007年4月11日 読売新聞)という。
 2000年の介護保険導入、福祉構造改革による民間企業の参入を双手を振って歓迎していた厚労省が飼い犬に手を噛まれたという構図だろうか。利益を追求するということは支出を出来るだけ下げ、収入を出来る限り最大化していくしかない。つまりこの業界の場合、介護保険から介護報酬を出来るだけ多く取り、支出のほとんどを占めるはずの人件費をとことん削減していくしかない。在宅介護の危機を迎えたといっても良いかも知れないが、コムスンは夜中の在宅介護であろうとなんだろうとどんどんサービスを引き受けてきたことが現場に最も大きな影響を及ぼす可能性がある。
 厚労省は大きな決断を下さなくてはならない時期に直面しているというべきだろう。5年おきの介護保険の見直しではなく、介護労働に対する報酬のこのとんでもない低レベル状況の改善、純粋民間企業に対する規制の方式を参入時のパフォーマンス・ギャランティーの方式を含めての検討、介護保険の抜本的改造を含めて至急に検討を始めなくてはならないだろう。フォーマルなサービスに期待するしかない、これからのこの国の高齢者、しょうがい者介護の状況を正直に捉え、それが成り立つシステムを作ることは厚労省官僚に期待される大きな任務である。この状況を放置しておくと今の社会保険庁と同じように官僚の職務怠慢を揶揄される可能性があるといっておかなくてはならない。