ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

「介護職員の待遇改善」

 北海道新聞をはじめ各紙が伝えるところによると厚労省は「都道府県や全国の介護サービス事業所に労働時間や賃金についての監督・指導や待遇改善を求める「指針」をまとめ」「26日の社会保障審議会福祉部会で正式決定し、関係先に通知する」としていると伝えられている。
(1)週40時間労働制が適用されていない小規模事業所(19人以下)も同制度を導入する、(2)他産業の給与を考慮して、職員給与を適切な水準とする、ことをポイントとしていて、介護報酬引き上げに前向きに取り組むという意向を表しているのだそうだ。
 とはいえ、これはあくまでも「指針」であって別段罰則規定を伴う法の改定などといったものではないわけだから、それを実現できようが、できまいが、なんら実際的なことは起きないだろうと予測されてしまう。週40時間労働を実現すると云うことは結果的に人材を補充する必要があり、それは当然コストの上昇に直結する。適切な水準の給与というものは一体全体どのくらいのレベルなのかもわからないだけでなくて、それを実現するためにはシステムの中だけで考えると当然介護保険料の値上げということになる。
 大変に基本的な議論になるわけだけれども、国民年金の原資としてもこれから国庫負担が1/3から1/2に増やされ、ここで介護保険料を値上げせずに国庫負担するとしたら、ますます財源をどこに求めるかが問題になる。すると簡単なのは、あたかも社会福祉目的税という形を取るような提案の仕方で片づける消費税率の増加だろう。消費税はおしなべて全市民が同じ税率で負担するというシステムである。つまり、収入の少ない層に相対的負担が最も大きくなるということである。だから、こうした社会保障システムの原資を確保するためには、受益者負担を原則として考えるのではなくて、応能者負担の形によって支えるという概念を構築していくことが不可欠である。
 利益の追求のためには、労働者の安定性を保つ正規雇用を安直にも放棄し、労働者が当然に得るべき報酬からすら利益をかすめ取ることによって作り出された状況を「経済の安定化」と称する利益追求集団としての企業がその利益率の圧迫によって国外へ移動してしまうことを懸念するべきだという与党自民党の考え方は、そのまま「国民のため」という選挙用の合い言葉を愚弄しているわけだ。
 お坊ちゃん政権が「上げるとも云っていないし、上げないとも云っていない」と「国民」を全く馬鹿にした表現で選挙を乗り越えることができるだろうと愚かにも思っているのは勝手だけれども、それを後押しすることを意図したこうした厚労省社会保障審議会福祉部会において厚労省キャリアーに振り回されてしまう学者たちの責任は大変に大きい。
 本気で介護職を確保し、医療職を確保する気が彼らにあるのだとしたら、厚労省内の経費の見直しから手をつけてみるべきだ。そして防衛費を中心とした予算の本気の精査、法人税率の増加、所得税のより累進課税率の増加を本気で考えよ。
 最も容易な手段を用いて乗り切ろうとすることを「改革」とは呼ばないのだ。それは「怠惰な妥協」と称するのである。