ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

並ぶ

 大阪に行ってみて気がついたのはあんまり大阪の人は「ここに列を作ってお待ち下さい」というところに並ばないんだなぁということだった。だから多分あの人より俺の方が先に来た、なんていう主張もしないのだろうか。
 東京で順番待ちの列に並んでいると、ようやく来た自分の番になってその係員の人にいろいろなことをお願いしてやって貰う時になって、余計な時間をかけて後ろの人をより待たせてはいけない、神経を使え、というプレッシャーを後ろから感じるし、自分でも出来るだけその場では妥協して早く済ませようとする。
 だけれども、ある国に暮らした時にわかったのは、正当に列に加わって時間を潰してようやく入手した自分の順番ではしっかりと納得するまで対応して貰おうとするということだ。正当に得た権利として。だから狡込みをする人もいないし、それぞれが意識していてちょっと順番が狂いそうになったりすると、「いや次は俺じゃない、あいつの方が先に来ていた」とフェアな態度を取るのが普通だった。それまで閉まっていた窓口が開くと、日本のようにそれに気付いた奴の早い者勝ちということはなくて、並んでいる人が「お前の方が先に来ていたんだからお前があそこに行け」という。この差は一体どこから来るのだろうか。
 ある国で、私がよくいっていた床屋では椅子が5-6席あって刈ってくれるおっさんたちは全く並んでいる人たちの順番なんて気にしていない。自分のひいきのフットボール・チームの話しを冗談交じりに大きな声で話しながらチャカチャカと刈っている。ひとりが終わると、大きな声でただ「つぎぃ〜!」と叫ぶだけだ。すると壁際に並んだ椅子に座っている客がそれぞれを見て、あぁ、俺が一番先にきているなと思って立ち上がり、それを他の客もその通りだと承認しているとそのまま刈って貰う席に座る。まだ誰か先に来た奴がいそうだよなぁと思って逡巡していると、他の奴が「お前の方が先に来たろ?」といって送り出してくれる。これはまだコミュニティが壊れていないということなんじゃないだろうか。日本だってそんなことなら出来るさぁ、と思うのだけれど、本当かどうか、実は甚だ自信がない。