運動代わりの散歩に出て、京橋から三越前まで、日向を選んで歩いた。なんだかんだで7,000歩くらいを歩いた。これくらい歩くと、もう股関節に負担がかかるのがわかるようになってきてしまった。これじゃ、一万歩は無理だろう。で、地下鉄で帰ってきてから表に出たところで、もう歩くのが嫌になって、都バスで四つ分ほど乗ろうという気になった。
停留所に来るとお爺さんとお婆さんのカップルがもう並んでいた。私は三人目。すると、そこへ黒塗りのレクサスのハイヤーがやってきた。これがバスの枠のすぐ前に車を止めた。その直前にはトラックが止まっている。つまり、バスが来て枠の一番前に止めたら、このレクサスが邪魔になって出られなくなる。ということはバスはもっと後ろに止めるだろう。すると、乗るのに、私たちは段を降りて、歩き、結果的に高くなったバスのステップに上がらなくてはならなくなることは自明だ。
ところがレクサスの運転手は、缶コーヒーを手に、ハザードランプを点け、どこかへ行ってしまった。なんだ、アイツはこのままにするつもりなのか。
そこへ、駐車違反を摘発する緑色の格好をした二人連れがやってきた。正式には駐車監視員というらしくて、委託された民間企業の従業員、みなし公務員という立場らしい。彼らはすぐさまカメラをとりだして、このレクサスを撮影。バス停の枠からどれくらい離れているのかを巻き尺をとりだして計測。すると、どこで見ていたのか、レクサスの運転手が慌てて出てきて「すみません!」と云いながら小走りで車のところへ来る。監視員が「動かしてよ!」というと「はい!」といった。監視員の二人はそのまま行ってしまったが、くだんの運転手はなぜか助手席の扉を開けごそごそなにかをする。そのうち、扉を閉め、辺りを見回すと、そのまま戻ってきた方へまた歩き出した。
一部始終を見ていた私はここですっかり頭に血が上った。こいつの小狡い手法にカッときた。こういう奴が得をする世の中であっちゃならんだろ。私の前に奴が差し掛かった時に「このまま行くのか!バスが来たら困るだろ!」と大きな声で言うと、奴は「バス停の枠には入っちゃいない!」と言い返してきた。「パーキングの人にすぐに動かすといったじゃないか!君は!いい加減なことをするな!」と続けたら、奴は逡巡した。悔しいながら、私はここで「お前!」といおうとしたのに「君!」といってしまった。しまった!と思いながら、(育ちは争えないもんだなぁ)と感心した(笑)。彼は車を出し、いずこともへとなく去って行った。バス停に並んでいた私の前後、ぜんぶで5-6人、は凍り付いていた。すぐにバスが入ってきて、みな何も云わずに乗った。
「このあたりの爺を馬鹿にするんじゃねぇぞ!」といってやりたかったなぁと思っているうちにバスはすぐにうちの傍に到着。あとからはいくらも思いつく。相手が反社会的組織構成員じゃなくて良かった。