各紙が伝えるところによると総務省は各種報道機関に対して衆院選投開票日の当選確実報道を慎重に行うよう要請したというが、これは1995年の参院選から国政選挙の度に出されているんだという。
民放連は「放送局への事前の注意喚起が常態化することに重大な懸念を抱かざるを得ない」と改めて反論しているという。(毎日新聞 2009年8月19日 東京朝刊)
近いところでは7月12日の東京都議選挙で北多摩二選挙区(国分寺、国立市:定員2名)で開票から2時間半後、NHKは自民党新人候補(結果的には3位で落選)の当確を打ったけれど、50分後に訂正を入れた。原因は投票者数の入力を間違ったという事だといわれている(2009年7月13日00時30分 読売新聞)。
お古いところでは麻生太郎は1983年の選挙で落選を経験したが、当時、NHKや新聞各社が「当確」を打ち、逆転負けして「事務所にお詫びに行った覚えがある」(地元・福岡のベテラン記者)という(SAPIO 2008年11月12日号掲載 2008年11月21日(金)配信)。
1993年の第40回衆議院議員選挙で新党さきがけから出馬した岩屋毅(大分2区)の場合は事務所から万歳がテレビで中継までされた挙げ句に最後で169票差で自民党公認の田原隆にひっくり返されたという(田原隆=自民党公認 79691票、岩屋毅=新党さきがけ公認 79522票)。
2005年の総選挙では当落の誤報はなんと20数件にまでのぼったという。
2007年7月の参院選では鹿児島テレビ放送が鹿児島選挙区(改選数1)から出馬、落選した皆吉稲生(民主党公認)を開票率97%時点で誤って「当選確実」と報じ、後に取り消して陳謝している。当選は加治屋義人(自民党公認)。2人の得票数はわずか2664票(皆吉稲生399,877票、加治屋義人402,541票)。「独自取材で票読みをした際、当選した加治屋義人さんの票を2500票少なく、皆吉さんを1000票多く見積もっていた」と説明したそうだ。
どちらかというと報道各社、殆どこの場合テレビだけれど、が当確を打つ競争をしているように見える。あたかもどこが一番早く当確を打って、他を圧倒できるかを競っているようだ。
公権力が報道に対してこうせい、あぁせいといちいち呼びつけたり、通達を配布することには大いに問題があると私も思うけれど、こんなところで余計な競争をしてほしいと一体誰が望んでいるんだろうかとも思う。
かつて立教大学の服部孝章先生がコメントしているように「どの段階で当確を出すかは放送局が判断する問題で、総務省が要請すべき事項ではない。一方、放送局は当確を一刻も早く打つことにエネルギーを使いすぎている(西日本新聞2007/07/12)」事は間違いがない。