ほぼ足りてまだ欲 その先

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映画「Miracle at St.Anna セントアンナの奇跡」

 見よう見ようと思っていてなかなか腰があがらなかった映画である。なにしろSpike Leeの映画だから多分見るだけの価値があるだろうと、これはまたずいぶんとイージーな動機である。そんなことをいいながら実は彼の映画を最後に見たのは多分「マルコムX」だろうから、もう何作も見ていない。
 舞台は1980年代のアメリカから始まる。イタリア北部の町St.Annaでのドイツ軍とパルチザン、そしてそこへ偵察で紛れ込む米軍の、しかも黒人だけで組織された第92歩兵師団のある中隊の4人が織りなす人間ドラマ、とでもいえば良いんだろうけれど、その中にはやっぱりスパイク・リーのメッセージが入っている。「なんでイタリア人は黒人に対する偏見がないんだろう、自分の国ではあんなに差別されているというのに」という言葉は痛い。
 原作者のJames McBrideは父親が第92歩兵師団に従軍したのだそうだ。
教会前の虐殺シーンでは牧師が集められた住民にひざまずかせて祈りを捧げるがこのとき第92歩兵師団が牧師とともに祈るシーンが重なり、ドイツ軍が祈るシーンも重なる。同じ宗教で、同じ主に繋がる人々が殺し合いをするという行為に対する皮肉だろうか。牧師はドイツ軍兵士にこめかみを打たれる直前に「主よ、彼をお許しください、自分でしていることがわからないのです」といってジーザスになる。
 この映画の論評として「(こんな)説教臭い話が、無信教(多分無宗教のこと?)な我々日本人に分かるかってんだ!R-15指定だけじゃなくてカトリック限定指定も付けやがれ」と書いている人もいるくらいだけれど、そんなことをいったら殆どのキリスト教圏が舞台になっている映画なんてみんなその範疇に入ってしまう危険性があると思うなぁ。他文化を理解しようとするためにはその宗教をも理解しなくては難しい。
 Omar Benson Millerが良い役をやっている。なんだかいつかどこかで見た映画のような気分にもなる。それにしても160分は長い。先日の「The Taking of Pelham 123(邦題:サブウェイ 123)」に比べたら長い、長い。それでも後半はあっという間だった。もうそろそろ上映期間も終わりそうで、シャンテのスクリーン3でも一日2回だけの上映になっている。
 この映画にはパトロンとしてブルガリだとかナイキだとか、何社ものスポンサーがついているんだけれど、どこにそのスポンサリングのメリットがあるんだろうか。エンディング・ロールに日系と覚しき人が少なくとも一人。
 あの辺のガード下、あるいはその並びのお店はずいぶん長持ちしているお店ばかりだ。昔入った店が今でもそのままやっている。いや、そういえばずいぶんみんなでいったカラオケやはあの事件以来なのかどうか知らないけれど、なくなっていたな。

Miracle at St. Anna

Miracle at St. Anna