ほぼ足りてまだ欲 その先

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美談

 ようやく男子スノボ・ハーフパイプが終わってやれやれだ。それにしてもドレッドヘヤーの兄ちゃんの話題にはこの一週間、楽しませて貰った。いや、それもおかしいな。楽しんだんじゃなくて、自分の判断を迫られていたような気がしてやっかいだったといった方があたっているかな。
 それにしてもさんざんっぱらみんなで叩いた挙げ句の果てに競技前日のどこのテレビだったか忘れたけれど、スノボ仲間の先輩の骨髄移植のためにみんなに資金を呼びかけ、見舞い、かれに復帰を決意させる声を掛けていた、という今度は「よい子」キャンペーンをしていた。他局を出し抜く切り口を見付けたディレクターはさぞかし喜んだことだろう。何事もなかったように全く触れないNHKの中継もなんだかどこかに腫れ物があるような案配で腰が落ち着かないよ。
 彼は多分人とのコミュニケーションが上手なタイプではないんだろう。どちらかといったら人を信用するベースができないまま物心がついたタイプじゃないかなぁと想像したりしていた。

 ひざを交えて話し合ったのは初めてだったが、監督は「その時に彼への考え方が変わった」と言う。「しっかり聞けば、きちんと気持ちを伝えてくる。本当に素直な子なんだ」。(時事通信2/18 17:27)

 なんだ、監督は今までちゃんと話したことがないんだ。シーズンになったら転戦しているんだからそんなチャンスがあるわけないか。ひょっとしたら選手にとっては単なる偉そうなおっさんでしかないのかもしれない。その程度の付き合いしかないんだろう。
 日本ではプロの選手がプロとして試合を選択して出場するチャンスを生かしてはくれないし、その待遇だって知られているゲームとそうでないゲームでは天と地の違いだという。よその国の選手たちはたっぷりの余裕で移動していくのに、日本の選手の待遇は狭いエコノミーでぎりぎりのスケジュールという扱いだという元コーチの発言がネット上で話題になっている。そのくせ競技団体の上は自分の保身しか考えないと。そういう境遇は実に嘆かわしい。そうした意識の低さという点では日本のスポーツ団体は旧態依然としていることは間違いがない。
 しかし、それと彼の今回の態度とは結びつかない。彼はあの格好をこんなに大きく論議されることになるだなんておそらく何も考えちゃいなかっただろう。どうよ?ってなもんだっただろう。スーツを脱いで10年経った私にしたってネクタイなんてもうとんでもないよ。ドレッドなんだもん、きっちりワイドスプレッドの襟のシャツにタイを締めたら似合わないと誰だって思うよ。ドレッドにしたのが間違いの元だったなぁくらいの意識にすぎないわけだろうよ。
 たかだか21歳の青年なんだからそんなにいろいろ要求するなよという人もたくさんいる。それでも私は彼が自分を鼓舞するためにかどうか知らないが、世の中を舐めた態度を取るのはやはり認めたくない。あまりにも人を馬鹿にしている。こういうことをしたら人は怒るんだということを知っておくことは必要だ。それをヨイショする大人は自分ひとりで責任を取れるのかといったらそうでないことを知っておく必要がある。
 彼のあの時の服装や記者会見を見て、「別に良いんじゃないの」という人は彼の社会的存在を今後も見守っていくことができるというのか。それによって「あぁ、あれでも通用するってことじゃん」と知った、後から続く者たちに対しても見守り、責任を取ることができるというのか。物わかりの良い大人の立場を取るのは多分革新的に見えて、居心地良いだろう。