ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

大きな病院へ

 右耳の耳垢栓塞から、真珠腫の疑い有りということで、大きな病院を紹介されて9時の予約で赴く。生まれて初めて行った病院ではないけれど、なにしろ大きな病院は時間がかかるという思い込みもあるし、めったやたらと検査をされて金がかかってしょうがないという印象があるんだけれど、検査ができるからこそ、大きな病院に行きなさいと自分の主治医から紹介状を書いて貰っていくというわけだ。
 今回の耳鼻咽喉科も、先日コレステロールが高いと忠告が発せられた内科も、私にとってはほぼGP的な医者の存在となっている。ところがそうじゃない人もまだまだ結構おられる様で、この大病院の耳鼻咽喉科にも直接「具合が悪いんですが」といってやってくる人もいる。だから、予約を持っていても必ずしも時間通りに終われるわけではない。
 ここが問題なポイントなんだけれど、英国や豪州のようにGPに行かない限り決して大きな専門病院にかかることができないという融通の利かないシステムも善し悪しではある。彼の国ではプライベイトの病院に行けるお金持ちはそんなことがないというのもおかしいもののようでもある。金で命が買えるというと大げさだけれど。
 ここ2日間の点耳薬が役に立っていたのか、バキュームで取り出してから、液体をシリンジに入れて二度ほどビューッと耳の穴に流し込んで洗った。するとあぁ〜ら不思議殆ど聞こえる様になる。しかし、さすがに大病院の医者はこれでは満足しない。聴力検査に私をかける。
 支持された生理学検査受けつきに行き、聴力検査に臨むのだけれど、そこに現れた検査技師という言葉が解けて流れるような、なんともだれだれな女性が、たるみきった喋りで「そこのぉ、まっすぐのぉ、みぎがわぁのへやにいってくらさぁい」という。見慣れた小さな防音室に入る。ヘッドフォンをセット。「左から、検査しはぁすぅ」という。ところが小さな小さなトーンが聞こえたのは右の耳だ。それでもまぁ、良いかと思って音が聞こえる度にボタンを押していたが、さすがにオイオイと思ってガラス窓を叩いて右に耳を指さす。すると彼女はうんうんとして、今度は左に音を出す。なんだ、やっぱり間違っていたのだね。
 次に、耳の裏の骨にあたるように音源をあて、反対の耳にはヘッドフォンを当ててそこからはノイズが出る。ところが彼女は一度扉を開けてから、なぜか「あらぁぁ」と仰ってからセッティングを換えて再度検査をなさる。要するに、要領を一度お間違えになったご様子だ。この人、大丈夫なのかなぁ。
 検査結果を持って診察室に戻る。周波数の高い方の聞き取り力ががたぁ〜と下がっている。医師の説明だと、普通の健康診断だったら「異常」といわれるような状態だというのだ。「しかし、これは加齢と共に高い方は聴き取りにくくなるのですよ!」といいながら彼は画面のカルテにキーボードで「ageing change」と書き込んでいた。
 彼の検査はこれでは終わらない。「加齢による衰えはあるけれど、能力として落ちていないから大丈夫だとは思うけれど、念のために骨への影響がないか確かめておきましょう」といって金曜日のCTを予約する。こういわれて「いやいや、先日もレントゲン撮ったし、被爆が怖いから良いです」といえる力を私は持っておらないのだ。
 さて、もうひとつの方の高音域で唄うとのどの特定部位が痛いという症状についてである。彼は直ぐさまカメラで見るという。「えっ!今はそんなことができてしまうのか」と驚いていたら、直ぐさまそこでやるというのだ。直ちに鼻の両方の穴に「プシュ!プシュ!」と二回ずつ何やら噴霧された。「苦いですよぉ〜」と彼がいう。確かにぐっと来るほど苦い。医者ってのはみんな経験するんだろうか。
 部屋の片隅の椅子に座らされ「背中を丸めて顎を突き出して」という。そりゃいつもの私の姿なり。あははと笑う間もなく、「力を抜きましょう」といわれるうちに怖いから私は眼をつむる。いつもこんなことで現実から逃避できると思っているのが浅はかではある。現実は如実にやってくるのであって、右の鼻の穴になにかがするりと入り込んでいるのを感じる。この類のことが大嫌いだ。あぁ、気持ちが悪くて堪らない。
 「鼻で呼吸をしましょう、つばきを呑み込んで、深呼吸をしてみましょう」なんて言葉が繰り返されて、拷問が終わる。しかし、これはなんとも思わない人にとってはなんということもないことなんだろうな。ぱっぱっと終わってしまったなんていわれちゃうんだろうな。
 胃カメラもそうなんだけれど、身体の中に何かを差し込むなんて冗談じゃないのだ。
 今や技術の進歩はお見事で、すぐにポラロイドのような写真を見せられる。取り敢えず問題になる様な部分は見られないという。しかし、確かに痛いのですがねぇ。彼の言を借りれば「食道から先になにかがおきているのだとしたらここではわからない」というのである。つまり声帯ではない。次は消化器内科だか外科だかに相談するしかない。こうなると医学も霞ヶ関と同じで、縦割りか。
 会計にいって書類を出したら、「6,200円」だというのでぶったまげてしまった。なにしろ病院で2,000円以上いっぺんに払ったことは滅多にないからだ。思わず口から出たのは「明細を下さい!」だった。要求しないと明細を出さないみたいだなぁ。呑み屋じゃないんだから、毎回出せばいいのにね。やれやれ。
 明後日のCT検査には一体いくら払うというのだろうか。これじゃ、病院に行かないで、最後の最後まで我慢して悪化する人がいてもおかしくはないな。
 外耳の炎症が治まっていないからと抗生物質を処方された。