ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

混合診療

 「保険診療保険外診療自由診療)を併用する「混合診療」を実施すると、治療費全額が自己負担となる」というやり方は厚生労働省の運用に寄って行われているらしいのだけれど、これが憲法違反だと国を訴えた人がいて、一審では勝訴、しかし国が上告した二審では逆転。そして最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は二審の判断を見直す際に必要な弁論を開かず、運用は妥当と判断し原告患者側の上告を棄却する判決を言い渡した。
 毎日新聞はこう書いている。

 健康保険法は先進医療の多くを保険対象外と規定するが、国が将来的な保険適用を見込んで定める「評価療養」については、特例的に全額自己負担としない「保険外併用療養費制度」が適用される。混合診療を禁じる明文規定はなく、こうした厚労省の解釈・運用の妥当性が主な争点になった。
 小法廷は「保険外併用療養費制度は、保険医療の安全性や有効性の確保、患者の不当な負担防止を図るもので、混合診療禁止の原則が前提。混合診療を全額自己負担とする解釈は、健康保険法全体の整合性の観点から相当」と結論づけた。(毎日新聞 2011年10月25日 20時20分 最終更新 10月25日 21時18分)

 それまでに確立していて既に保険適用されている治療を受けていて、そこへ先進的な治療法が表れた時に、それにすがりたい気持ちを患者が持ってその治療を受けるやいなや、保険が適用されて受けていた治療についても一気に自己負担になるというのが現在の混合診療の禁止という奴である。
 なんで、これが合法なんだろう?先進的な治療法に踏みきるか踏みきらないかは患者個人の意思ではないのだろうか。もうなんにでもすがりつきたくなる気持ちは充分にわかる。そんな時は「副作用なんてどうでも良いや」と思うのだろう。それもわかる。
 それをどうして厚労省日本医師会が「そんなことをするなら全部自分で払え」というのはどういう論理、倫理なんだろうか。
 原告の人は腎臓がんを病んでインターフェロン療法を受けながら専心治療を受けて全額自己負担になったのだそうだ。

 この判決に関してはなぜか(笑)産経新聞が一歩踏み込んだ記事を書いていて、こちらの方が数段分かり易い。

 厚労省は「安全性や有効性などが確認されていない医療が保険診療とあわせて行われ、科学的根拠がない医療を助長する可能性がある」と主張。さらに、自由診療の幅が大きくなることで、患者の金銭的負担が不当に拡大する恐れがあるとしている。(msn産経ニュース2011.10.25 21:39)

 厚労省は昭和59年(1984年)に一部の高度先進医療などに例外的に混合診療を認める「特定療養費制度」を導入していたが、平成18年(2006年)には、その制度をさらに拡充させる形で「保険外併用療養費制度」を開始。「保険適用のための評価を行うもの(評価療養)」という観点から、有効性が認められた先進医療などの実質的な混合診療を認めてきた。(同)

 今回の判決では、5人の裁判官のうち3人が、「医療技術や新薬の開発の発展は目覚ましく、海外で有効性や安全性が確認された新薬や医療技術は患者が切望している」と、関係者の今後の努力を期待する趣旨の補足意見をつけた。
 「本来あるべきなのは『必要な医療は保険診療で』という原則」と話すのは、日本難病・疾病団体協議会の水谷幸司事務局長。「混合診療の全面解禁よりも、多くの人に効果が期待される医療に対して、早期に保険が適用されるような政策が必要」と訴える。
 高度な医療ほど医療費は高額となるため、保険適用が進めば国の医療費は膨らむ懸念もある。
 東京医科歯科大大学院の川渕孝一教授(医療経済学)は「日本の医療費は、諸外国より安いとはいえ、一定の節度が必要」としたうえで、「今後は、自由診療保険診療の両立について、知恵を出し合っていく必要があるのではないか」と指摘している。(同)

 これで私の疑問を解くことができた。今回は産経の一方的な勝ちだ(笑)。ただ、年号はどうしても西暦で書いて貰わないとわかりにくい。
 判決は5人の裁判官の全員一致だそうで、 その5人とは那須弘平(弁護士出身)、田原睦夫(弁護士出身)、岡部喜代子(判事出身)、大谷剛彦(判事出身)、寺田逸郎(判事-法務省役人出身)である。