ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

今は

 佐久平の某蕎麦屋でのことである。
歳の頃なら70歳前後のおじいさん二人が隣の席に座った。間に割り箸と爪楊枝が入ったケースが置いてあったのであたかも別席のごとき様相を呈してはいたけれど、同じ大きな机の端と端に座っていたから、まぁ相席といってもおかしくはない。
その二人のおじいさんはなにもいわずにするりとすわった。そう表現できるほど二人は痩せているのだけれど、ただ闇雲にやせ細っているというわけではなくて、帽子をチョコンと頭に載せているおじいさんは結構筋肉質な細さで、日にも焼けている。ところがよくみるとその帽子はタオル地で、縫い目がもうボロボロで汗染みというよりはなんだか茶色くしみている。真っ白かったらしいポロシャツはかなり昔のスタイルでタオル地でできていて、泥の跳ねたようなものが茶色い小さな水玉になっている。確か、私も中学生の頃、こんなポロシャツを着ている写真があったなぁと頭の中で白黒の写真をめくっていた。
帽子のおじいさんは注文をするにも相棒のおじいさんが注文するのに任せていて、その任せ方がなんだか肝胆相照らしている人のそれではなくて、呼んでもらったんだから呼んでくれた人の選択にお任せするのが礼儀だとしている人のやり方の様なのである。で、その二人が注文したのはこの真夏に天ぷらそばだったのはちょっと驚いた。
天ぷらそばが来るまでの間の二人の会話が途切れ途切れに聞こえて来るのだけれど、くっきりと聞こえて来た帽子のおじいさんの言葉に思わず私は耳を疑った。
はらたいらというのはうまい漫画を書くよねぇ」だったのだ。今、あのクイズダービーで一世をを風靡した(といっては甚だ失礼だけれど)はらたいらを話題にするこの二人は一体何者なのであろうか。もっと驚いたのは次の一言だった。
谷岡ヤスジってのもすごいですよ」だったのだ。
私は一瞬今は一体、西暦何年なのかと連れ合いの顔をみた。