ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

 うちは親父もおふくろも岡山の出身だったからか、昔から飯のおかずに出てくる魚といったらブリだとかサワラだとか瀬戸内っぽいものばかりだったのだけれど、それが普通だと思っていたから何とも思っていなかった。
 たまに岡山から親戚が夜行急行「瀬戸」でやってくると朝早く到着して、阿波踊りのお姉さんがかぶっていそうな笠に挟まれた鯛の浜焼きを持ってきたりした。
 前にもここに書いたことがあるけれど、真冬に親父が川魚屋を探しては鮒を買ってきて出刃包丁でこれを無茶苦茶に(あの親父の不器用な調理だからそんな風にしきゃ見えない)叩き、人参、里芋、ネギ、蒟蒻、油揚、春菊なんてものとぐつぐつ醤油味に煮込み、アツアツのご飯の上にこれを載っけて食するという「鮒飯」と呼ぶぶっかけ飯を作ったりして大騒ぎをしていた記憶がある。
 だから、社宅の中の近所のうちが昼飯に塩鮭を焼いてお茶漬けで食べているのが旨そうで、羨ましくて、そのうちに良く入り浸っていたのを子ども心に覚えている。つまり、うちでは滅多に塩鮭を食べなかった、ということではなかったか。
 山梨出身の両親の元に育ったつれあいがいうには東京の実家では青魚、鰯や鯖、秋刀魚なんかのそれも干し魚が殆どだったというのだ。そのかわりつれあいの親戚には伊豆半島の先端の漁村に嫁に行ったのがいて、そっちに遊びに行くと伊勢エビ、トコブシが食べ放題だったというのがどうにも豪勢に聞こえる。そういえば結婚するかしないかの夏にそこに遊びにいって、イヤというほどトコブシを食った覚えがある。今から考えればもっと味わって食べておけば良かった。