ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

昼飯

 私が行く鮨屋がもう随分前に店をたたんでしまったので、鮨難民が続いている。つれあいが浅草のすしや横丁に新しい鮨屋ができているからいってみようというので、出かけてみたのは多分昔は居酒屋だったようなところで、屋号から見たら近所の二階にあった店のような気がする。入り口に「500円並ちらし」と書いてある。あまりといえばあまりの安さで、怪しいことこの上ない。その横に「極上ちらし1500円」と書いてある。じゃ、と入ってみると、おじさんが一人でやっている。並と上とひとつずつと注文。カウンターに男の客が二人。一人が煮込みのようなものを肴にビールを呑んでいる。慣れない手つきでそのおじさんが刺身を切る。そのおじさんが外に回ってきてお茶をくれる。一人で全部やるらしい。そのうちにおばさんがやってきて、白衣に着替えながら奥の座敷に頭を突っ込んで誰かと話している。あれ、奥にまだ人がいるんだ。なんで手伝わないんだろう。
 で、出てきたちらしがこれ。どっちが上か一目瞭然、というか、いくら500円でも、これを出しちゃまずいんじゃないのか。それでも、如何にも観光客という風情のおじさんおばさんが結構入ってくるのは、多分この「500円」にやられちゃうのだろうけれど、いくら何でもこれはないだろうなぁ。その上、このシャリが全然酢がきいていない。鮨やだってぇのに酢の匂いがしない。これじゃ、三州屋銀座一丁目店の海鮮丼1,050円の足下にも及ばない。
 鮨難民はまだまだ続く。
 出て六区の通りを歩くと、平日とはいえ、さすが天気晴朗なる真っ昼間だけあって、人通りは多い。演芸場の前で志ん輔と誰かの三人会の看板を見ていると、反対側から出し抜けに赤いタータン模様のジャケットを着て眼鏡をかけた兄ちゃんが、声をかけてきた。「僕これから上野で物まねに出るんですが(で、なんでこんなところでうろうろしてんだよ)、あがり症なんで、今ここで物まねをやりますから、訊いてくれませんか?」ってんだね。どう考えてもおかしいでしょ?ここでやらなくても良いし、わざわざ人を呼び止めてやらないったって、黙ってそこで「じゃ、誰々の物まねをいたします!」といいながらやったが良いじゃねぇか。絶対裏があるだろう?(どうもこの世の中は生き馬の目を抜くつうくらいだから油断できねぇ)。そもそも爺さん婆さんの二人連れがカメラを袈裟懸けにして歩いてきたら、これはやりやすく見えるに相違ない。地元の人間を相手にやるねぇ!と啖呵を切って振り切った。
 近頃の浅草は本当に昔の浅草じゃなくなってきたねぇ。これは多分びっくりドンキーじゃねぇや、ドンキー・カルテットでもねぇや、えぇ〜っと、あ、そうそう、ドン・キホーテが出てきてますます拍車がかかってくるんだろうなぁ。