ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

真打ち昇進披露興行

f:id:nsw2072:20191111060357j:plain:w360:left 今年落語協会から4人の真打ちが誕生し、9月21日から50日間にわたって東京の5つの寄席での昇進披露興行が開催された。若い友人が親しくしていたおかげで私も知遇を得ていた柳家権太楼一門の柳家ほたるくんも4人のうちのひとりで、師匠の「権」を貰い、そして大ファンの坂崎幸之助から「之助」をもらって「柳家権之助」として晴れて真打ちとなった。そんなことをいっちゃなんだが、彼は風貌が格好良いわけじゃないし、噺だってとんでもなく素晴らしいわけでもないし、驚くほど人々の耳目を集めるような個性を持っているわけじゃない。だけれどもどことなく憎まれないという人間である。どこの披露興行でも、何人もの落語協会の先達からも言われるように、これでようやく噺家らしい噺家のスタート地点に立ったわけだ。とにかくこれからなんである。不思議なことに、若いときから耳目を集める魅力をほとばしらせている噺家だっている。芸術協会の今度の真打ち、小痴楽や、噺家ではないけれど、講談の神田松之丞 の様に若いときからキラキラしている連中はいるけれど、多くの若手はまだまだ食い足りない。時として、高座を聞いていて、ここんところを指摘してやったら良くなるんじゃないのかなぁと思う噺家はいくらもいる。しかし、そんなことをしたってなんの足しにもなりゃしない。自分がふと気がついたら身につけていたりするものじゃないかなと云う気がする。それが真打ちになってしばらくすると驚くほどに芸風がしっかりしてくるような噺家がいる。これがあとになって驚くような看板になっていたりする。権之助がそうした看板になれるように祈りたい。しかし、それを見届けるほど長生きができるどうか、それは誰にもわからない。

 今日の高座で驚いたのは、いつもだったら世間話みたいな高座なのに、しっかりと「禁酒番や」をやった鈴々舎馬風だった。なんだか随分久しぶりに彼の落語を聞いた。来月で80歳。落語協会最高顧問。ちなみに「お笑い三人組」の三遊亭金馬は来年3月で91歳になる。