思い出すのは昔のことばかり。
小学校3年生くらいの時だと思うのだけれど、うちの町会の子供会の集い、というのが小学校の教室を借りて開かれたことがある。こんなことはとても珍しくて、だいたいひとつの丘をその区域とするうちが属する町会で、町会行事なんて多分他にはなかったのではないだろうか。丘の町会だから、多くのうちが坂道に面していて、隣の家も階段を上がらなくてはならなかったりして、あんまり隣近所のつきあいがあるわけではなかった、うちの隣には200坪ほどの敷地の中にお抱え運転手さんの家があって、お屋敷にはお年寄り夫婦が住んでいるだけだと聞いていたし、当のご夫婦の名前はもちろん知っているけれど、見たことがないくらいで、今時の集合住宅暮らしと大差がなかったのだ。
その子供会は、なにか演し物があったり、ゲームがあったり、地域のご父兄がご尽力なさったのだと思う。帰り際に、白いお菓子屋がくれる様な紙の小さな袋に三角の薄荷糖の菓子と、なにか饅頭の様な物が入っていた。ひとつ貰ったら、その日来なかった二歳上の姉の分も持たせてくれた。私はもっけの幸いと、うちへ帰る途中で姉の分というか、ひとつを食べてしまった。うちに帰って「お土産にこれを貰ったんだ」と見せびらかした。つまり姉にはあげなかった。
この話はこの歳になるまで誰にもいわなかった。