ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

出入国管理及び難民認定法(入管法)の顛末

これを愚挙といわずになんとする。

改定案が参議院本会議を通過し成立した。
一年後から発効する。

改定の主要項目

  • 難民認定三回目以降の申請者は強制送還を可能にする
  • 入管が認めた「監理人」と呼ばれる親族や支援者らの元で生活ができるようにする
  • 収容継続の必要性を3カ月ごとに判断
  • 送還に必要な旅券の申請を命じられて拒否したり、送還の航空機内で暴れたりした場合の刑事罰
  • 条約上の難民には該当しないが保護すべき避難(ウクライナ避難民など)を、準難民として認定する「補完的保護対象者」制度を創設
  • 難民認定が適正に行われるよう、専門的な職員を育成


ではなんでこんなに混乱して、しまいには参議院法務委員会で審議が打ち切られ、強行採決をしてまで自公維国側はこの改定を成立させたのか。
ひとつにはどんどん入国管理局行政がいい加減で放りっぱなしの状態になっているのかがあからさまになってきていることが挙げられるだろう。
とにかく日本はこれまでろくすっぽ難民認定をしない、ということを指摘されてきたが、そんな批判はどこ吹く風で、知らん顔をしてきた。
2021年の実績では「難民と認定した外国人が74人、難民とは認定しなかったものの人道的な配慮を理由に在留を認めた外国人が580人」にすぎない。陸続きで多くの人たちが移動してくる欧州や北米と比べたら、嘘のように極端に少ない。
 しかも、難民審査に関しては想像を超える事態になっていたことが明らかになっている。
 1979年 - 11月24日に尾崎行雄の三女相馬雪香の呼び掛けで「インドシナ難民を助ける会」として創設された現在の「難民を助ける会」の名誉会長だという柳瀬房子が2021年の衆院法務委員会の参考人招致で「難民を探して認定したいと思っているのに、ほとんど見つけることができません」と発言していたことだ。その上、110名以上いる難民審査参与員のうち、柳瀬房子が担当した人数が圧倒的多数に及んでいる。
 入管の難民認定審査(一次審査)で不認定とされ、不服を申し立てた外国人の二次審査を、2021年は全6741件のうち1378件(勤務日数34日)、2022年は全件4740件のうち1231件(勤務日数32日)を彼女が担当したという。全体の申請数の約二割を彼女に割り当てたことになる。単純に割り算してみると2021年は1日に40件、2022年は38件をこなしたことになり、1日に8時間稼働したとして(あまりにも考えにくいが)、12分に一件を処理したことになる。もちろん申請者と面談するわけで、申請者は申請慣れして、理路整然と説明できるわけではないので、どこまで聞き取れるのかといったら、ほぼこれは何もやってないに等しい。彼女は2005年から2012年の間に夜雨2000件の審査をしたが、難民と認定したのはわずかに6件。
 ここに味噌があるようだ。というのは

伊藤敬史弁護士は21、22両年度で計49件審査し、難民認定や人道上配慮のための在留特別許可を出すべきだとの意見書を出したのは17件。認定率は34.7%と高かった。すると納得できる説明をされないまま、22年度後半から、割り振られる審査が半減した(東京新聞2023年6月1日 12時00分)

 これは北村泰三中央大学名誉教授も同様のようで、

年2〜3件、難民認定すべきだという意見を述べてきた。すると、昨秋から審査の配分数が、月4件から1件に大きく減った。(同上)

 つまりどういうことが行われていたのかというと、難民と認めないという結論を出す人にどんどん審査を回し、できるだけ難民申請を却下する方向に動いていたんだということは、ど素人の私にもよくわかる。

 挙句に齋藤健法務大臣

50月30日の記者会見で、柳瀬房子氏が1年半で500人の対面審査をした可能性があり、それで十分な審査ができるのか、という質問に対し「審査では事前に書類を送って(参与員に)見てもらっている。それも含めて一般論として、1年6カ月で500件の対面審査を行うことは可能であろうと思っている」と答えた。
 それなのにその日の夜に撤回、「不可能」と訂正した。

 自信たっぷりに「可能だ」といっておいて慌てたように「不可能だ」と言い直し、単なる言い間違いだといって素知らぬ顔の半兵衛を決め込んだ。何しろええかっこしい齋藤健だから、慌てる風もなく、平然と正反対を主張。

 ではなぜ日本という国は難民を受け入れたくないのか。シリアからの難民にしても、国家を持たないクルド人にしても、ビルマを追われているロヒンギャの人たちにしても、どう考えても居場所を求めて難儀をしているのは、テレビでの報道を見たらすぐに誰でもわかる。それなのに、なぜ難民として認めようとしないのか。かたや、ウクライナで戦禍に巻き込まれて逃げてきた人たちはどんどん受け入れられているし、しまいにはウクライナ軍の兵士で戦争で負傷した人たちの治療まで請け負っている。外国人労働者は劣悪な環境の中で20数年も前から実習生という名目で受け入れられてきた。難民と、技能研修生とはどこが違うのか。
 単純化すると、こんな言い方だってできる。
 つまり、難民を受け入れても、誰も儲かる人はいない。しかし、技能実習生は送り出し国でも受け入れ側の日本でも、その移動によって儲かる人がぶら下がっている。
 一旦難民を受け入れることになると、次から次にやってくるだろう、手間がかかり、費用がかかる。
しかし、その手間、費用を負担しているのは誰か。自民党か?岸田文雄か?齋藤健か?いやいや、国民のひとりひとりである。

なぜ日本は難民を受け入れずに強制送還にこだわるのか。

そうそう、もうひとつの大きな問題は大阪入管の酔っ払いスタッフの件だ。

ことし1月ごろ、大阪・住之江区にある管理局の施設で、常勤の女性医師が酒に酔った状態で外国人の収容者の診察をしていた疑いがあることがわかった(05月30日NHK関西news web)

しかも大阪入管職員が診察日の翌日に作成した報告書とみられる文書の存在を日本共産党の仁比聡平参院議員が公表。
東京新聞が報じている。

1月20日新型コロナウイルスのワクチン接種を受けた後、午後3時過ぎに登庁。職員に菓子や即席麺などの手土産を配る一方、笑みを浮かべて陽気に振る舞い、落ち着きや冷静さを欠いていた。
医師を含め診療室にいた計5人の呼気検査を実施。酒気帯び運転の基準値を上回る呼気1リットル中0.22〜0.36ミリグラムのアルコールを検出。

 齋藤健法務大臣はこの件について6月2日、衆院法務委員会で「2月下旬に把握し必要な事実確認を行うよう指示した」と答えたが公表しなかった理由は「訴訟を前提に対応する必要があり、事実確認に時間がかかっている」と述べた。驚くべきは事実の確認が発覚から4ヶ月経ってもまだ完了していないということだ。こういうことを国民をバカにするという。それで野党が法務大臣の問責決議案を提出したのだ。こうした状況のまま、行われたのが今回の強行採決で、非難されるべきは山本太郎ではなくて、こんな無茶苦茶なことで、入管法を通した自公維国側であることがわかる。それでも自公維国を支持する人の気がしれない。これでいいんですか。