あと一週間もしないうちに16日が来る。2月16日というのは私にとって忘れられない日である。かつて働いていた会社の工場で大惨事が起きて、12名の犠牲者をだした、その当日なのだ。あれから17年が経つ。既に風化しているといっても良い。現場は既に全く跡形もなく、今や高層集合住宅が建っている。その跡地に慰霊碑を建てているらしい。会社を辞めてからは誰も連絡を暮れるわけでもないから知らないのだけれども、先日ひょんなことでお電話を下さった方がお話しされていた。その跡地の高層マンションに暮らす人たちにとっては知りたくもない話だろうし、なんの関係もないだろう。良くそんなところにそんな慰霊碑を建てることを自治会が納得したものだと、関係者の労苦が忍ばれる。しかし、できることなら当日関係した人間の一人としては一助になるべくお手伝いをしたかった。
先日、新しい本棚を構築して、いろいろな荷物を移動させた時に、なんの変哲もないごく普通のコクヨの横書き原稿用紙が出てきた。使った記憶がないから、もったいないなぁとぱらっと開けると、十数枚に万年筆で書き込んである。これはかつて使っていたシェーファーの安物万年筆の筆跡だ。インクが漏って往生した。なんだろうと読んでみると、その事故当日のことを書きかけてある。当日慌てて開いた記者会見のあとくらいで停まっている。
そもそもこんなことを書き始めていたことすら忘れている。随分前に書こうとしたに相違ない。今だったら原稿用紙を取り出さずに、パソコンに向かって書き始めていたことだろう。これを元に完成させてみようかな、という気にもなるが、あと一週間ではとても完成できそうにない。目標としては来年のその日、だろうか。