世の中どこにいてもだれも第三者に対する言葉を口にしなくなった、というのは私が常日頃この東京で暮らしていて思うことなんだけれども、昨日数人で話していて、確かに他人に声をかけるということをしなくなったとみんなが同意。昔は良く、謹厳実直そうな爺さんが人の前を横切るとか、人に道を譲ってもらうようなときに「失敬！」といったものだ。私はかつてそんな爺さんを格好良いなぁと思っていた。自分も早く良い歳の取り方をして、電車の中なんぞで若造を制して「失敬」といってみたいもんだなぁと思っていた。ところが決して「良く」はないけれど、人並みに、いや人並み以上の速度で歳を取ってみるとなんともはやこの「失敬！」が死語となっていたのである。いやいや、このまま終わらせてはなるまいと、いつの日にかこの「失敬！」を復活させてやろうと決意するのであった。
