昨日友達との待ち合わせに銀座の教文館の2階を指定しておいた。私は時間ギリギリに到着したのだけれど、その友人が仕事の関係で出てこられなかったらしくてなかなか現れない。挙げ句に私の携帯電話の電池がほとんど切れて向こうから電話を入れてくれているのは分かるのだけれどもこっちからかけられない。教文館ビルの奥の階段を降りて外に出ると、なんと珍しいことにあそこにお誂え向きの電話ボックスが建っていた。そこからメッセージを入れていつもの巣で待ちかまえることにした。結果的には会うことができずまた仕切り直すことにしたのだけれど、その間充分に本を見回すことができて有意義だった。
「期待と回想」鶴見俊輔著 朝日文庫 2008.01
鶴見俊輔の名前が書いてあるだけで反射的に手に取る。表紙の文字がどこかで見たことがあるなぁと思った。目次の前の頁にこれは1997年に晶文社から出た上下本の文庫化であると書いてあって、あぁそうかとわかった。上下巻で5千円からする本だったので、地元の図書館から借り出して読んだ。そして念願の文庫本となってようやくわがものとなった。その間十年がたったことになる。そうすると小熊英二のあの分厚い本(「民主と愛国」)はあと2年だろうか。物事はそう簡単にはいかないところが悩ましい。「期待と回想」と「日米交換船」「戦争が遺したもの」のおかげで随分多くのことを知った。
「東京裁判」日暮吉延 講談社現代新書 2008.01
これまた分厚い新書である。「あとがき」に2002年に木鐸社から出版された「東京裁判の国際関係」をもとに平易にまとめ、補足したものであると書いてある。木鐸社のものは708頁、1万円からする専門書だ。粟屋憲太郎の東京裁判にかかわる書籍を読むうちにこの本を知り、捜したがとても手が出ず、母校の図書館でようやく見付けたもののなかなか借り出すチャンスに恵まれなかった。「東京裁判」と著者・日暮吉延の名前でこれまた反射的に手にしたものである。幅広の帯には保阪正康の「<歴史>が待ち望んでいた書だ。」とする推奨文が記載されている。著者は1962年生まれ、立教大・法学部出身。
その他に
教文館2階の新刊書の類も充分に見て歩いた。以前に丸善でラップされたサイン本だけが積んであった林望著「ついこの間あった昔」(弘文堂)を発見。写真の数はそれほどない。彼らしい文章というべきなんだろうけれど、どうしてもこちらにも書いた赤瀬川の「戦後腹ぺこ時代のシャッター音 岩波写真文庫再発見」と比較してしまうことになる。この類の1950年から1960年代を振り返る写真を含む本は本当に数多く出版されていてこれでもか、これでもかといっているように見えるくらいで多分辟易してしまいそうだけれども、赤瀬川のものは深く考えさせる。岩波写真文庫は今度は川本三郎セレクションとして「 東京湾—空からみた自然と人」「 東京—大都会の顔」「川-隅田川」「東京都-新風土記」「東京案内」の5冊が再版されている。