どうせ日本橋に出るんだからと遅い昼飯をあの辺で食べようと探す。日頃歩き慣れていないところは勝手が分からない。あっちに行ったりこっちに行ったりしているうちにとうとう殆ど昼飯時を逸してしまう。結局「小諸そば」で天丼セットなんてものを食べる羽目に陥る。なぁんだ。周りは30代のサラリーマンばっかり。みんな生き馬の目を抜くような世界で暮らしているんだろうなぁ。
デパートの美術サロンに行くとお〜、なるほど、あの方の大きな絵が目の前に。そして見ているうちにあの方がおられるのを発見。15-6年振りにお会いする。相変わらずにお元気そうなり。
日本橋の本屋にはいる。目当ての本が見つからない。じゃ、しょうがないから京橋の本屋まで足を伸ばす。さすがにここにはあった。ついでに新書をためつすがめつする。中公新書から「広田弘毅」が出ているけれどちらちらっと見て、今日は止めておこうと思った。藤森照信ががちくま新書から「建築史的モンダイ」というものを出している。New YorkのWTCの話に続いてこの地震国ニッポンでなんで高層ビルなのかという日頃の私の疑問にも答えていそうなので、ピックアップする。人類はこれまで建設した高層ビルをWTCを除いてひとつも建て直した実績がないのだと読んではっとした。これからその難問がやってくる。WTCの構造から考えるとあの壊れ方は納得ができたとしても、じゃ、なんで通りを隔てた向こうの普通の構造の高層ビルまで壊れたのかが分からないと書かれている。鉄骨柔構造の霞ヶ関ビルに関わった武藤の話も興味深い。ある新聞では五重塔をヒントに柔構造を取り入れたと書かれていたけれど、そんなはずはないと看破されている。あの人の息子も相当に変わった人だった。サラリーマンなんてやらないで何か違うことをやれば良かったのに。
さて、池袋に行こうと東京駅へ出ようとすると、例の新光証券のウィンドウの株価表示に軒並みマイナスがついている。そしてそこにテレビカメラを回しているのが二人ほどいる。終値を示しているらしいが、10,500円近辺で、大変に低い値段だ。だけれど、私にはおおよそ関係がない。ぎりぎりに池袋に到着してみると、場所の変更が出ていた。慌てて探し当てる。話を聞いてメモを取るのに忙しい。最後にレクチャラーが今度中公新書から出た「広田弘毅」は興味深いと発言。あ、あれだったかと納得。駅に向かう途中で大型書店に入って入手。レクチャラーの著書についての書評4000字、ビデオの感想文等を科せられる。1946年1月豪州が東京裁判に関して米国の要請に応じることになったことと、BCOFの一員として日本に進駐することになったこととの関連性について見解をお訊ねすると思っていた通り「英連邦軍の日本進駐と展開」(千田武志著 お茶の水書房 1997)を参照することを進められた。いずれにしろ日本軍によって度重なる本土空爆を受け、太平洋地域において多くの戦争犠牲者、捕虜犠牲者を出した豪州の対英、対米交渉は非常に大きなポイントであったことを私は意識してはいたもののこのあたりに来て、再び認識を新たにする必要があることに気づきはじめた。豪州における対日観というものがそう単純なものではないことについて思いを新たにすべきだと思う。
- 作者: 服部龍二
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地震と火山の島国―極北アイスランドで考えたこと (岩波ジュニア新書 (369))
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「通訳者と戦後日米外交」:著者の鳥飼玖美子はもちろん一頃同時通訳者として一世を風靡したあの人。今は大学教授で本書はあとがきに書かれているように、著者がサバティカルを得て英国サザンプトン大学に提出した博士論文を「日本の読者むけに書き改めた」ものだという。従ってあくまでも研究書としての形態をなしている。
大変おおざっぱに申し上げると日本の同時通訳者として知られていた西山千、相馬雪香、村松増美、國弘正雄、小松達也の五氏に著者がインタビューをし、その中から戦後の同時通訳の歴史をひもといているというものである。この業界の歴史を書き留めた、という点で非常にユニークであり、彼女ならではの視点での研究だったといって良いだろう。ただし、私はこの分野を研究書としてではなくて、ノンフィクションとしてより多くの一般的な読者を想定した形で書いて欲しかったと思っている。著者が属しているのは異文化コミュニケーションを標榜する学部を持たない独立研究科と称する大学院であったが、私の印象ではむしろ英語学(そんなジャンルが存在するのかどうか知らないが)、もしくは英語活用スキル学とでもいった方がよいのではないかと思っていた。この研究科は非常に特異なことにあとから学部が創設されている。どうもこうした動きから見ると著者の研究者としての側面よりも起業家としての側面の方がむしろ優っているような気がする。
西山千はあの「こちらヒューストン」で知られた人だけれど、つい数年前まで私は彼がユタ州生まれだったことを知らなかった。相馬雪香は私は「難民を助ける会」で知った尾崎行雄の三女で、それ以降様々なところで彼女の足跡や発言に接してきたけれど、同時通訳者としての存在を全く知らなかった。村松増美を初めて知ったのは豪州に関する情報をひっくり返していたときに、多くの豪州関連図書を発刊していた「サイマル出版」を知り、また、豪州の日本人社会で著名な人だったことからだけれども、そこから同時通訳者としての姿を知った。今となっては「サイマル出版会」がなくなってしまったことは大変に悔やまれる。國弘正雄はテレビのキャスターから社会党参議院議員となったことを知っていたけれど、彼もまた同時通訳者としての姿を知る機会はなかった。小松達也については私は全く知識を持ち合わせていない。
「東京裁判、戦争責任、戦後責任」:読み終わらなくて再び借り出した。
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- 作者: 大沼保昭
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