ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

ムーンライトながら

 東京から大垣まで走っている全席指定の快速列車「ムーンライトながら」が3月14日で終わるのだそうだ。その後は青春18切符が売られる時期に臨時列車化するという。つまり最盛期だけに走らせるということだ。
 民営化されるということはこういうことだ。採算の合わない営業はしない。
 この「ムーンライトながら」の前身は東京駅23:45発の普通電車大垣行きだった。湘南方面から通っていた友人たちは最後の切り札で、この電車に新橋から大挙して乗って帰った。失敗すると翌朝会社に来ない。気がついたら朝の大垣で帰ってくるのに時間が掛かる。そのまま有休を取って名古屋で見物して帰ってきた奴もいたし、金がなくて上りの各駅停車を乗り継ぎながら、検札が来る度に電車を降りてやり過ごし、とうとう東京駅に帰り着いたときは夕方だったという今から考えると嘘のような奴もいた。
 今では大分知れ渡ってきたからそんなことを思っている人は少ないだろうけれど、あの「青春18切符」を買うのに年齢制限はない。何歳でも買える。買える時期が学校が休みの時期と重なっているので、そんなイメージはあるし、そもそもネーミングが間違っている。なにが「青春」で、なにが「18」だというのだ。
 私は2003年3月に東京から広島県の呉まであの切符であの「ムーンライトながら」に乗っていってきた。やって来た列車はかつて信越線や中央本線で走っていたような特急車両で、それはそれは古いけれど、良き高度成長期を想い出させるような車輌だった。しかし、東京駅で乗ってみるとかなりな乗客がおっさんである。多分、「てっちゃん」系の人たちで、とても乗り慣れている感じが見て取れ、如何にも楽しくて仕方がないという雰囲気に満ちあふれている。ほとんど「青春」でもなくて「18」でもなかった。
 大垣までいって乗り換えると結構混むという記事をどこかで読んで、岡崎だったかで降り、始発の電車に乗り換えていった。
 これから高齢者が増えるわけだから利用者が増えるのかと思ったけれど、あの切符があってこそのこの列車だろうという気は確かにする。時間はあるんだけれど、金はねぇという人のためのプログラムは民間会社には受けないんだろうなぁ。
 廃止といえばブルー・トレインも西行きはもうなくなってしまう。週に2本位を観光目的で走らせることはできないのだろうか。諸外国の夜行寝台列車の殆どはそうして残っている。豪州の東西を貫いて走っている「Indian Pacific」は端から端まで乗ると三泊四日かかり、週に二本運行されている。私は西豪州のPerthから南豪州のAdelaideまで乗っただけだけれど、実に優雅に、そして実に非日常的な景色を愉しむことができた。それぞれのコンパートメントも決して新しくはないのだけれど、コンパクトに情緒溢れる演出がしてある。私たちにサービスしてくれたアテンダントは大阪にJETプログラムだったかでいっていたという日本語のわかる女性スタッフだった。食堂ではベテランのおじいさん、おばあさんが様々な話題を提供してくれて仲間に入れてくれた。今から考えれば良く彼らが普通にフレンドリーにしてくれたものだ。中にはわざわざ米国から豪州に移民してきた老夫婦も乗っていた。これからキャンベラに引っ越すんだといって。
 そんなサービス列車になって復活できたりしないものだろうか。