ほぼ足りてまだ欲 その先

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観光立国

 昨日NHKラジオのニュースを聞いていてずっこけた。なんと日本という国は「観光立国」を目指しているんだそうだ。おもわず「えっ!?これで?」と突っ込みたくなった。
 確かに外国にいて「どこから来たの?」と聞かれて「Tokyo, Japan」というと「あぁ、とても綺麗な街で良いよねぇ」といわれることは良くある。その度に「え?綺麗だったっけ?」と思う。それは多分表面的に見ているだけだからだとは思うけれど、皇居の二重橋前や銀座を歩けば確かに綺麗だ。だけれども観光客というのはそういうところばかりが好きなのかといったら決してそうではないよ。
 考えてみると築地の中央市場や、浅草浅草寺に大挙してやってくる外国人の人たちを見ていると綺麗だから来ているわけではない。
 築地はあんなに素人が入って盛りだくさんの魚がらみが一挙に見られるところはおよそ外国にないのであって、そりゃもう珍しい光景なのだ。例えば南半球一の魚市場ってのは多分Sydneyのフィッシュマーケットだろうけれど、競り場にしたって、場外に相当するそれぞれのfish shopにしたってせいぜい地方の水揚げ港の横にある市場の小売店程度のものだ。それでも楽しい。それがあんなに各種海産物店まで揃っているんだもの、楽しくないわけがない。大江戸線の駅や日比谷線の駅でちょっと立ち止まってみていたら、直ぐさま両手が広がるほどの国籍を数えることができちゃんじゃないかというほど遊びに来ている。
 浅草寺だってあんなに物珍しい建物とちまちましたお店が延々と並んでいる様はそうそうある訳じゃないからに決まっている。中国やシンガポールあたりのお寺でもあれほどのものは少ない。
 京都の良さはやっぱり昔からの風情がそのまま残っている光景が日本人にとっても外国人にとっても多分落ち着くからだろう。京都の良さは欧州の各地に残っている歴史を語っている街並みとほぼその意味合いは同じだ。しかし、本当に残念なことに交通至便であの街並みが歴史を語っているような地域はそうそう日本にはない。戦争ですべて失った。各地に部分的に残っている街並みは確かにあって、日本人は情報がそれこそどんどん入手できるからわかっているけれど、外国から遊びに来る人たちにはそこまでの情報は行き渡らない。
 よほど好きな人や若い人はLonely Planetのようなガイドブックでコアなところまで立ち入って情報を得ている。だから、東京でいえば日比谷線三ノ輪駅にわざわざ降り立って、元山谷のドヤだった宿泊施設に泊まっている。安い、治安がいい、交通至便(といっても日比谷線しかないけれど)で若者がいってみたい六本木だって地下鉄で一本!夕飯は近くの居酒屋で充分なディナー。たまたま友人と三ノ輪近くでの会議が終わって居酒屋に入ったら外国人ばかりでびっくりしたことがある。
 外国に旅に出てどうやって情報を入手するかと考えると今ネットに繋がらなかったら話にならない。地図だってパソコンかタブレットスマートフォンで見るだろう。そのためには無料あるいは格安に繋がるwifiが必須だ。今日本国内でどれほど無料で利用できる電波が飛んでいるんだろうか。他国に先駆けて、この辺がもっと充実したら相当喜ばれるだろう。今各お店が提供しているwifiはほとんど通信会社と契約していることが前提だったりする。限られた店では無料で提供しているけれど、例えばバス停周辺は必ず無料wifiが飛んでいるとか、観光地には確実にinformationがあってそこは無料だというのであればいいのになぁと思う。
 日本のバスや電車はとても入り組んでいるけれど、東京では日本語と英語が表記してあってとても便利だ。しかし、残念ながら英語表記は字がとても小さい。あれではわからない。よその国がやってないから良いのではなくて、他国がやってない分ここではやるでないといけないと思う。なにしろロンドンでもパリでもバスでは次がどこかもわからないし、地下鉄はろくにエレベーターがない。東京では成田から大きな荷物を引っ張って電車を乗り継いで地下鉄に乗って来たって必ずエレベーターがついている。古い駅だって次々に工事している。これは売り物になる。
 しかし、東京ではどの電車でも乗れる一日券、あるいは一週間券はない。バス、都営、メトロ、JRのなんだろうと乗れる切符があったらこれは便利だ。パリにはこれがある。その代わりにSUICAを持てばいいじゃないかということになるけれど、これはボンドを払ってそのまま残ることになるし、なにしろ乗車賃が安くならない。
 ロンドンのOyster Cardも同じように入手するときにはデポジットがいる。しかし、地下鉄にもバスにも通用するけれど、なんと利用料金がガクッと安くなる。揚げ句の果てにはどんなに乗っても一日7ポンド以上の金額にはならない。その上、帰国時には窓口でこのカードを返すとちゃんとリファンドしてくれる。ここがこのカードの優秀なところだ。New YorkのMetro Cardはカードを使うと格安になるのは凄いことなのだけれど、リファンドされない。Melbourneのカードもリファンドされない。
 ここでやっぱり東京がSUICAじゃなくても、海外旅行者限定のTOKYO CARDを作ってこれを使えばどの公共交通でも利用できてその上料金が海外旅行者料金で安くて、揚げ句にリファンドしてくれるものを作ったら、君たちが「観光立国だ!」と威張るのを許してあげても良い。
 昨日のニュースで気になったのは観光ヴィザで富裕層を対象にした一年間有効ヴィザを新設するといっている点だった。その例としてあがっていたのは豪州のいわゆる「Retirement Visa」だった。
 かつては一定年齢になると豪州に3-4千万円の金を持ち込めば4年間のヴィザを得ることができていた。それが年々ハードルが高くなっていき、しまいには6-7千万の金を持ち込んで一定の割合を投資しなくてはならなかったのだけれど、今では新たな申請を受け付けていないというものだった。今では過去にそのヴィザで入国している、あるいはしたことがないと申請できない。
 これは観光立国とはなんの関係もない。そこに観光促進に真剣でない官僚思想がどうしても邪魔しているとしか思えない。
 貧乏人や若者の観光なんてどうでも良い、金持ちの観光客を呼び込みたいと思っているのだったら例えば皇居、御所、迎賓館といった、日本人にも殆ど公開しないことが当たり前だと思っているところを外国人観光客に限る条件で非常に高い料金でガイド付き見物をやったら良い。中国・韓国の周辺国に喧嘩を売っている国が、何が「観光立国」なのか安倍君にその見解を聞いてみたい。「それは誤解、というものがですね、おありのようでありますが、わたくしはそれはお話をしてですね、・・」なんていう愚にもつかないご説明は不要でござるぞ。

 また今日も書きすぎて読みにくくて申し訳ありませぬ。