保阪正康のこれまでの話を通して私が全く着目してこなかった大正期を考えてみるというきっかけをもらったことは、やはりプラスになる。「占領下日本の教訓」の終わりの方にも出てくるのだけれど彼がこれまで出会ってきた人は右から左まで本当にバラエティに富んでいて、来月以降はそうした人々の話を中心にお話しいただけるというので、今から楽しみだ。
ここからしばらくは会えないだろう友人と新宿センタービル53Fの「つきじ植むら」でランチ千円を食べながら話して、来月初めで終わってしまう映画、「Cadillac Records(邦題:キャデラック・レコード~音楽でアメリカを変えた人々の物語)」を見るために恵比寿に向かう。
ちょっと油断したから恵比寿ガーデンシネマに至る長い動く歩道をがんがん歩く。入場が始まったところに飛び込んだら私の番号は32番だったから多分平日午後のこの回に入った客は50名ほどだろうか。なんでか知らないが若い男が私の隣に座る。思わず反対側に寄る。
マディ・ウォーターズ役のJeffrey Wrightのできが良くない。最後まで彼が気になる。ビヨンセはさすが。見終わってみての感想はなんだか「Ray」を彷彿とさせるといえば良いけれど、あっちの方が完成度が高かったような気がするなぁ、というものだ。正直にいってしまうとここに出てくるmusicianの全員(ブルース・ハープのリトル・ウォルターを除く)のレコードを持っていたけれど、Muddy WatersもHowlin' WolfもEta Jamesもそれほど当時の私は感銘を受けなかった。
brightnessがないから当時の(音楽的に未熟な)私が面白いと思うわけがないともいえる。Eta Jamesの「I'd Rather Go Blind」よりも今回のビヨンセの歌の方が説得力もbrightnessも格段の相違があると思ってしまうのは録音技術が全然違うからでもあるのはいうまでもない。しかし、Eta Jamesはビヨンセのように目はでかくないよ。
それにしても予告編で上映される日本の映画はどれを取っても「おっ!こりゃ見たいなぁ!」と思わせる何かがない。もうちょっと練りに練り、削るところを削り、また足して削り、といった熟成した映画を見てみたい。
本屋を覗くと小熊英二がまたとんでもなく分厚いものを出している。それも上下二巻である。各巻7,140円ではとても手が出ない。両方とも1000頁を超える。
エコ・ポイントで申し込んだ図書券は一体いつになったら送られてくるというのだろうか。もう一ヶ月以上が経つ。ひょっとしたら呑まれちゃっているんじゃないだろうか。
- 作者: 小熊英二
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