ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

厚労省発表

今日の厚生労働省発表にはこれまでに見られなかった二つの発表があった。
 ひとつは「相対的貧困率」についてであり、もうひとつは貧困ビジネスのひとつ、「無料低額宿泊所」について。

相対的貧困率

 野党の時から民主党はわが国の貧困実態をつまびらかにするべきだと主張していたと記憶している。
 この相対的貧困率は国立社会保障・人口問題研究所作業班がOECDに提供している貧困率の作成基準によっていて、それは等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分に満たない世帯員の割合ということになっている。
 わかりにくいなぁ。朝日新聞はこれを「所得を世帯人数に振り分けて高い順に並べたときに真ん中の所得(228万円)を基準に、その半分に満たない人が占める割合を示す(asahi.com2009年10月20日14時4分)」と書いていて、まぁつまり細かいところをねぐってしまったわけで、ま、正確にいうと違うんだけれど、概ね、まぁいいかというところか。
 つまり発表された2007年(暦年)の日本ではひとり当たり114万円以下の所得の人がどれくらいいるんだろうかということになるわけで、それが日本は15.7%だったという。ということは2008年は確実にこの数字を上回るのだろう。
 OECDが刊行している2008年の報告書に記載されている2004年の日本の貧困率はメキシコ、トルコ、米国に次いで4番目に高かったそうだ。自民党が目指してきた米国にここでも追従していてそれらしい結果が出ていると小泉ー竹中は満足なのだろうか。
 その2008年の報告書中に記載されている「ひとり家庭の18歳未満の子どもの貧困率が58%と半数以上が該当していた」というのは驚きだ。
 私の疑問はテレビのニュースが「これが発表されたのは画期的」というのだけれど、厚生労働省の発表ではOECDに報告しているというわけだから、この程度の情報であればそれほど画期的なこととは思えないのだけれど、どういうことなんだろう。なにか私の聞き間違いなのだろうか。
 しかし、この問題点はここで語られている貧困は飽くまでも所得に基づいていて、資産を加味されていないところにあるのではないだろうか。そしてまたしてもだけれど、この国では個人の所得については完全に補足されているわけではないから、実態からかけ離れている部分が相当程度存在するということでもある。

無料低額宿泊所

 こちらはそれほど大きい扱いの記事になっていなかったのだけれど、いわゆる貧困ビジネスのひとつといわれているもので、暮らす場所を持たない人たちに対して提供される宿舎をいっている。
 ただの民間経営宿泊施設とは違っていて社会福祉法第2条第3項に規定されている第2種社会福祉事業の第8号にある「生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他の施設を利用させる事業」という法的な規定に基づく。
 ただ、第2種社会福祉事業というカテゴリーは第1種と違って「都道府県知事への届け出により開設」で許認可事業ではない。事業開始の日から1ヶ月以内に事業経営地の都道府県知事に第67条第1項に掲げる事項を届出ることとされている。
 その形態にはいくつかに分かれるけれど、入所対象者として(1)住宅に困っている低所得者及び生活困窮者(2)緊急保護を求める者(3)その他と規定されている。
 今回の発表によると6月末時点で全国に439施設あり、入所者が1万4089人。その9割以上にあたる1万2894人が生活保護受給者である。だから家賃は、生活保護費から家賃に該当する住宅扶助の上限額に大体相当する設定になっている。めいっぱい取れるものを取るというやり方である。
 全施設のうち3割にあたる132施設で入所者の金銭を管理しているそうで、そのうち31施設では入所者との間の契約すらしないで金銭管理をしているというけれど、そんな約束もなしに管理されるのはおかしいじゃないかとクレームをして追い出されたんじゃかなわないなぁと思ってそのままになっている場合が多いはずだ。
 もちろん本来的な目的を持って経営しているところも大いにあるが、必ず取りっぱぐれのない生活保護費をあてにして劣悪な環境の中に入所者をおいている施設についての巷の噂は後を絶たないし、これまでテレビでも報じられていたし(ただし、普通の人が見られるような時間帯ではないけれど)、毎日新聞は「無料低額宿泊所取材班」が報じ続けてきた。保護費の殆どを施設利用の費用としてさっ引かれ、なけなしの金で暮らしているとそこから脱皮する力を溜めることができない。あたかもドラッグ漬けのような状態になってしまう。
 第2種社会福祉事業としての届け出でをしないで、同じように経営をしているところだってあるというくらいだ。
 連帯保証人を要求され、敷金・礼金を要求される一般の民間賃貸物件に移るのは殆ど不可能だ。だからこそこういう施設が第2種とはいえ社会福祉事業として始まったのだけれど、今度はいつまでもそこから脱皮できずに保護費を貢ぎ続ける結果となる。
 適切な施設でなくてはならない、程度の規定では改善を促すことは難しいし、そうかといってこれらの施設がなくなると今度はその約1万5千人が路頭に迷うことになる。根本的な仕組みの作り替えが必要となるのだけれど、その糸口はなかなかほぐれない。