昨夜のTBSラジオの「dig」は青木理と江藤愛がナヴィゲーターで、私が寝ていた布団の中でふと目が醒めていつものクセでラジオのスイッチを入れたら、弁護士の落合洋司がもうひとりの人とともに、今回のパソコン遠隔操作誤認逮捕事件について語っていた。
警視庁、神奈川県警、三重県警、大阪府警で誤認逮捕があって、問題になった事件のことだった。
私はこの事件のことを聴いた時に、ネットに詳しい人だったら、あぁやったかと思っただろうし、多分日本の警察の現場はこの程度だろうなぁと納得し、同時に自分にも被害が及ぶ危険は十分にあるなぁと振り返っただろうと思う。
怖い怖い、だからネットは怖いといってネットにこんりんざい触らない人は良いかもしれないけれど、これからもネットに接続していこうと思っている人は何かしらを考えなくてはならないのだろう。
もうひとつ思ったのは、警察の現場も、そしてその警察あるいは検察を担当しているマスコミの記者も犯罪、あるいは事件の現場について最初から詳しい人がいるとは限らない、という点だ。マスコミの取材記者たちはいつまでもひとつのジャンルを担当しているわけではないからこつこつと取材しながら勉強をしていくというわけにはいかないという事実がある。そして警察も現場の担当者はここの事象を抱える分野に見識がある担当者なんてものはそうそう簡単にいるわけがない。
私はかつて企業広報の担当を3年半ほどしたことがあるのだけれど、その間に現場で事故を起こし、その取材の最前線で時々刻々と状況を説明する立場に立たされたことがある。その現場は一般の人はほとんど立ち入るチャンスのない現場で、図面があって、それを元に説明をしても、なかなか三次元的に理解することが出来ない。その証拠に当時の新聞記事を見返してみると、読者の理解のために記者が起こしたであろうポンチ絵は、われわれ現場の人間から見ると(はなはだ顰蹙ものではあるが)滑稽としか言い様がないものでしかなかった。
警察も記者会見で克明に説明していても、それが終わると、もう一度解説してくれと要求してくるくらいだからわかっていない。
多分今度の事件でも、警察の現場はパソコンが遠隔操作がされている可能性について考えるなんて思いつきもしなかったに相違ない。それを耳にした時には驚いたことだろう。警視庁は管内の担当者を集めて、こういう可能性についても今後は注意しろと訓示したらしいけれど、これは本当に現場にとっては頭の痛い問題だろう。これまでの事件では起きようがなかった、考えもしなかった事件だからだ。こればかりは場数を踏めといったって、その種の話に詳しい人からヒヤリングし、実際にどんな不正が起きえるのかということは、この時点でわかったとしても、時間が進むと思いもよらないことがまた起きるという繰り返しになるだろうからだ。
えらい時代になってしまったという印象だけれど、それこそサイバー・ポリスが組織されなくてはならなくなったなぁという印象が強い。
大阪地検特捜部の証拠改ざん事件
検察が証拠となるフロッピーを改ざんしたといういわゆる「郵便不正事件」のきっかけを報じた記事を書いた朝日新聞・東京本社 特別報道部記者の板橋洋佳記者が登場して、青木理がどういうきっかけでそのスクープをものにしたのか、どういう影響があったのか、どういう状況があったのかについて質問し、板橋記者が自らの口で発言するという興味深い番組だった。彼は下野新聞から朝日新聞に転じた記者だそうで、父親の死をきっかけに、人は死んでからは何も言えない、生きているうちしか何も言えないのだという意識を持ったことがきっかけで新聞記者になったという、非常に高邁な意識を持ち続けている記者なのだ。
こういう記者がいると一服の清涼剤となり得るのだけれど、朝日新聞が原発に関して、そして「国民の生活が第一党」に関してとり続けているスタンスが、彼らの活動を帳消しにしてしまう。