うちのお猫様が、近頃どうもご執心なのが、人間様がお使いになる洗面所のベーシンに水をはらせて、頭を突っ込んで呑むという奴である。
彼女は鼻が生まれつき悪いらしくて水を飲みながら巧く呼吸ができないらしくて、べちゃべちゃと音が汚い。餌場にちゃんと大きなマグカップに水を張っておいてあり、そっちも呑むのだけれど、時として人の顔を凝視して「みゃぁ」と鳴き、「あたしを抱き上げて洗面所にあげておくれ、それでもって水を張りなさい」と指図する。そのくせ抱き上げると「ぎょえ!」なんぞと悲鳴に近いものをあげる。満足するとぽんと飛び降りて、これの始末をまた人間にさせる。奴には人間のバトラーが24時間付いている。どこかの高級ホテルのロイヤル・スイートに暮らしているようなものだ。