ほぼ足りてまだ欲 その先

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誤解・ニュー・オーリンズ・ジャズ・フェスティバル

 今年もTom Fischer and New Orlenas Jazz All Starsが来日。浅草おかみさん会主催の公演が一昨日、昨日の昼・夜と浅草公会堂であり、これは今年でもう27回目になるんだそうで、良く続いているものだと感心する。時代の波を乗り越えているというのが素晴らしい。普通バブルがはじけたらこの種のものは廃れてしまう。
 ディキシーにしてもハワイアンにしても、カントリーにしても、アメリカ圏生まれの音楽はこの国でも進駐軍がいた頃は随分流行ったものだけれど、今となってはすっかり廃れてしまい、聴衆はあたかも寄席に行ったのかと見まごうばかりである。珍しく若者集団がいるなと思ったら、多分おかみさん連中から券がまわって勤め帰りにやってきた金融機関の営業連中、といった風情。
 そういわれてみれば私だって、ディキシーランド・ジャズと日本でいっているこの分野の生演奏をちゃんと聴くのは一昨年のこの会以来のことだ。
 ところが非常に不思議なことに、欧州でストリート・パフォーマンスのように演奏されているのがこのスタイルが圧倒的に多い。どちらかというとコード進行がそれほど複雑でない割にアップテンポの曲が多くて乗るということもあるかもしれないし、アンプのいらない楽器が殆どだということもその理由のひとつかも知れない。
 チェコプラハでも、スペインのバルセロナでも、ハンガリーブダペストでも、フランスのストラスブルグでも、この種の音楽を演奏する人たちに出逢ったことがある。今回来日のリーダー、Tom Fischerは今年の初めにはロシアにコンサート・ツアーに行っているくらいだ。

 今回の来日メンバーはThomas Hook(piano)、Richard Moten(bass)、Charles Fardella(tp)、そしてリーダー、Tom Fischer(cl)は例年通り。ドラムスのWalter HarrisとトロンボーンのRobert Harrisは初めて。バンジョーのNiel Unterseherはずっと来ているメンバーだったかどうか、記憶にない。女性の歌はSharon Moten。
 今年も鎌倉や大垣、銀座、お台場、ライブハウス等でのスケジュールでやってきたようだ。
 彼らの前には外山喜雄とデキシー・セインツが出演。外山夫妻(奥さんバンジョーとピアノ)はもちろん早稲田大学ニュー・オーリンズ・ジャズ・クラブの出身。このサークル出身者はものすごくたくさんいて、今でも浅草の「HUB」なんかを拠点に演奏している人たちが多い。外山喜雄は日本ルイ・アームストロング協会会長でもある。
 ディキシー・セインツは夫妻の他に粉川忠範(tb)、藤崎羊一(b)、サバオ渡辺(ds)、鈴木孝二(cl)という構成。サッチモのナンバーはさすが。しかし、Tom Fischerの率いるメンバーのメリハリと力強さの前にはさすがに霞むのは致し方ないだろう。
 それにしても浅草おかみさん会の主催はなんだかもうわけがわからない。会長が冒頭挨拶に立つが、自分が誰なのか一言も言わない、氷川きよしのコンサートのようにきらきら光るものを振り回す、演奏中に正面でカサ持って踊り出す(New Orleansでは葬式でも結婚披露でもみんなでカサ持って踊りながら行進すると聞いている)、盛り上げようとしているのはわかるけれど、第三者にとっては邪魔で邪魔でしょうがない。
 そんなお騒がせは主催者の打ち上げでやっていただければ良いんじゃないだろうかと毎回思う。なんだか訳のわからん爺さんが途中で袖から出てくるのには唖然。内輪とお客の区別がついていないという、まぁ、歳をとるってことはそんなことどうでも良くなっちゃうの典型のようなイベントだ。ちゃんと聞きたい奴はもっとこぢんまりとした会場で高い金払って聴きに来い、ということだろう。
 それにしてもSharon Motenがなんでこのステージで「I Left My Heart In San Francisco」を唄ったのか、Tom Fischerがテナーを手にして「Harlem Nocturn」を演奏したのだろうか。これはもう謎だろう。誰かが無理矢理やらせたのだろうか。浅草でディキシーで、これかよ?と思わず突っ込みたかった。