ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

ブリーフケース

 そういえば1970年代のサラリーマンの中にハードなブリーフケースが流行ったことがあった。私も例外ではなくて、人工皮革の黒い四角い角の堅いものを持って歩いていたことがあった。会議の机において、「バチッバチッ!」とバネ仕掛けの留め金を外してやおら資料を取り出してみたりして、一丁前のつもりだった。今から考えるとお笑いだ。
 当時、地方の造船所で働いていて、海辺のかつてであれば誰かの別荘だったような松林の中の平屋があって、そこに外国から来た監督官が長期滞在していた。なにしろ田舎だったので、そういう外国人が暮らすような施設はそんじょそこらにはなかった。
 そこには独り者が滞在する家もあって、そこで食事を提供してくれる独り者のおばさんが住み込みでいた。ある日、打ち合わせと新たにやってくる予定の外国人の為の準備をかねていってみると、そのおばさんがとっくに他界された旦那さんが昔使っていたというブリーフケースを捨てようとしていた。
 それはワインレッドとでもいうような色をした、ちょっと派手なものなのだけれど、持ってみるとやたらと軽い。何でできているのかと思ったら、なんとボール紙なのだった。上から何か塗料が塗ってあって、多少の水がかかっても影響はなさそうだけれど、激しい雨ではダメだろう。
 捨てると仰るので、それを戴いてきて暫く使っていたけれど、雨に濡れるのが気になって、なかなかつかえないうちに時間が経ってどこで処分したのかもう忘れてしまった。今から考えてみると、結構面白いケースだったのに。