ほぼ足りてまだ欲 その先

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呑み屋

 私は元々酒が強くない。これは血統だ。親父もすぐに真っ赤になってオダをあげていた。下手な歌をひねり出していた。下手な割に好きだった。酔っぱらってはSPの流行歌を買ってきた。傑作なことに、当時、レコードを二色の寄り紙ひもで十字に結んでぶら下げてきた。驚くべきことにわが家には親父が若い頃に買ったらしい、ベートーベンの「田園」や「月光」のSP盤アルバムがあった。そういうものには豪華な革の表紙がついていて、いかにも「アルバム」と呼ぶのにふさわしい装丁だったのだ。
 そんな血を受け継いできた私だから、酒は強くない。それなのに外に呑みにいく。それも多くの場合一人でいく。うちではいっさい呑まない。つまり、酒が呑みたくて呑みにいくのではない。
 私の場合はそこにいる人と話をしにいくのだ。ついでに呑んでいる。それでも喋る相手を誘って三々五々呑みにいくというのはかなり稀。だから、そういう呑み屋で知り合っていて、その人のプレイヴェイトな連絡方法は知らないというひとは多い。中には著名人もいる。いても連絡方法なんて知らない。たまたまそこでばったり再会する。もう今更連絡方法を教えてくれなんていわない。