ほぼ足りてまだ欲 その先

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千の証言スペシャル 「記者たちの眼差し12・8日開戦の日に〜2014年」

 民放テレビのドキュメント番組はまともに見られるものは数少ない。そのほとんどはニュースワイドショーでしかない。TBSの報道特集だって、テレビ朝日のサンデースペシャルだって、その切り口の鋭さに違いはあるけれど、ほとんどワイドショーだ。じゃ、民放テレビはまともなドキュメンタリー番組はないのかといったら、そんなことはないのだけれど、そのすべては真夜中にやっている。みんなが寝静まったあとで、コソコソとやる。免許を自分たちが与えていると思い込んでいる自民党ネトウヨ政権はそんな一桁の半分でもない視聴率しかとっていない番組は放りっぱなしにしているようだ。
 なにしろ日本テレビ系列の「NNNドキュメント」は日曜日の深夜、正確に言うとブルー・マンデーになって1時間も経った頃にちょろっとやる。TBS系列の「JNNドキュメント」は毎週火曜日の夜11時からで、「報道の魂」は第一第三日曜日なんて中途半端な夜中に放送される。あのフジ産経グループで、いつもちゃらちゃらしたアホ番組しきゃ作っていないと思われているフジテレビ系列だって、「FNNドキュメンタリー大賞ノミネート」を平日夜中の2-3時なんて枠ではやっている。次回の放送は16日の26:19からの約一時間で、FNNらしく北朝鮮拉致問題を取り上げる。
 先日、開戦記念日の12月8日の「報道の魂」は驚くことに3時間の長丁場で25:30-28:30の放送だった。JNN系列の各局の記者、あるいはディレクター17人がそれぞれ取材した短編を公開した。それがタイトルの”千の証言スペシャル 「記者たちの眼差し12・8日開戦の日に〜2014年」”なのだ。
 私はもちろんこれを録画してみたのだけれど、何となく寝にくかった昨夜、というか今朝未明にほぼこれが放映された時間帯に再生してみることになった。録画は広告をすっ飛ばすことができるから、実際には3時間かからなかっただろう。番組の内容は実に考えさせるものばかりで、誠に月並みの感想で申し訳がないけれど、一体人間というものはあれだけ凄惨な目に遭いながら、その歴史をなんで愚かにも繰り返そうとするのだろうかというものだ。
 戦争は人間が明確に血を流し、痛みに呻吟し、思わず目をそらしたくなる光景をこれでもか、これでもかとさらけだし、別れに泣き、喪失に慟哭しても、その感覚を次の世代にはそのままでは伝えることができない。しかし、こうして伝えようとする行為からすら目をそらす。そして、権力はこれ幸いにと、目がそらされている間にコソコソと洗脳する。
 沖縄決戦の惨状を伝え続ける体験の母。特攻を見送った勤労動員の元女学生。学徒出陣を見送った同級生、満州に渡った27万人のうちに取り残された少年、日系二世でありながら志願していたから生まれたハワイになかなか帰り着くことができなかった元予科練兵。戦死した元オリンピック選手候補ジャンパー。次から次から、各地の若い記者が証言者を直接訪ねて取材した。
 なんでこんな番組がこんな夜中に淡々と流されっぱなしになっているのか。今年の12月8日はなぜか静かだった。
 ところで、この歳になって初めて知ったことがあって息を呑んだ。1940年は東京オリンピックが予定されていただけではなくて、札幌オリンピックも予定されていたのだった。