ほぼ足りてまだ欲 その先

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メルケルさん

会場からの質問:大変すばらしいスピーチをありがとうございました。主催者を代表して質問させていただきます。隣国の関係はいつの時代も大変難しいものです。そして厳しいものです。過去の克服と近隣諸国との和解の歩みは、私たちアジアにとってもいくつもの示唆と教訓を与えてくれています。メルケル首相は、歴史や領土などをめぐって今も多くの課題を抱える東アジアの現状をどうみていますか。今なお、たゆまぬ努力を続けている欧州の経験を踏まえて、東アジアの国家と国民が、隣国同士の関係改善と和解を進める上で、もっとも大事なことはなんでしょうか?
 メルケル首相の回答「先ほども申し上げましたが、ドイツは幸運に恵まれました。悲惨な第2次世界大戦の経験ののち、世界がドイツによって経験しなければならなかったナチスの時代、ホロコーストの時代があったにもかかわらず、私たちを国際社会に受け入れてくれたという幸運です。どうして可能だったのか? 一つには、ドイツが過去ときちんと向き合ったからでしょう。当時ドイツを管理していた連合国が、こうした努力に非常に大きな意味をくみ取ってくれたからでしょう。法手続きでいうなら、ニュルンベルク裁判に代表されるような形で。そして、全体として欧州が、数世紀に及ぶ戦争から多くのことを学んだからだと思います」
 「さらに、当時の大きなプロセスの一つとして、独仏の和解があります。和解は、今では独仏の友情に発展しています。そのためには、ドイツ人と同様にフランス人も貢献しました。かつては、独仏は不倶戴天(ふぐたいてん)の敵といわれました。恐ろしい言葉です。世代を超えて受け継がれる敵対関係ということです。幸いなことに、そこを乗り越えて、お互いに一歩、歩み寄ろうとする偉大な政治家たちがいたのです。しかし、それは双方にとって決して当たり前のことではなかった。隣国フランスの寛容な振る舞いがなかったら、可能ではなかったでしょう。そして、ドイツにもありのままを見ようという用意があったのです」
 「ドイツの首相として、私はアジア地域にアドバイスをする立場にはないし、するつもりもありません。それは社会的プロセスから生まれてこなければならないことです。歴史が示しているように、アドバイスをもらってうまくいくとは限らず、難しくすることもあります。一方で、平和的な解決策の道が見いだされなければならない、ということも正しい。なぜ私たちがクリミア半島の併合の問題だとか、ロシアによるウクライナ東部の親ロシア派への支援にこんなにも厳しい立場をとっているのか。領土の一体性を受け入れることが、過去、現在とも、基本秩序だからです。これが、いわば欧州の平和秩序の根幹をなす柱だからです。数百年の欧州の状況をみると、国境はいつも動いていました。今日の国境を認めず、15〜18世紀の状況を振り返る限り、決して平和をもたらすことはできない。だから、領土の一体性は、まだ十分ではなくとも、やはり平和的共存を可能にするのに必要な前提条件であるのです。だから、もちろんアジア地域に存在する国境問題についても、あらゆる試みを重ねて平和的な解決策を模索しなければならない。そのためには、各方面からのあらゆる努力を続けなければならないのです」(朝日新聞digital2015年3月10日00時19分)