ほぼ足りてまだ欲 その先

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特攻

 日本人は滅私奉公思想に洗脳されていたから、自らの浮かぶ瀬も望みもすべて国に捧げるという姿が素晴らしく、美しく、価値あるものとされてきた。いや、今でもそうだといった方が良いだろう。万民のためには自らの欲求、考え方、思想は封印するべきだという価値観は今でも有効だ。戦時体制に入った頃からの思想教育は、明治革命思想の元にあったと云っても良いかも知れない。
 先日九州の高速道路建設の邪魔になっていた密柑農園がある山を県は強制執行した。テレビのニュースで画面を見た人は多いだろう。60代の農園主は立てこもっていた(自分の土地なんだから、そこにいて何もおかしくはない)山から何人もの男に仰向けに捕まれて、みっともない格好で担ぎ出されていった。テレビでは大写しだった。名前も年齢もクレジットされていた。正に犯罪者扱いだ。「売ってくれ!」「いやだ、先祖代々守ってきた土地だ、売らない」と断ったら犯罪者同然だ。
 東九州自動車道NEXCO 西日本が建設する。もちろんNEXCO 西日本は民間企業だ。民間活用だと云って何もかも、インフラを民間に売り飛ばした。その民間企業が自分の事業を拡大するために県に訴えて強制執行させると云うことがどんなことを意味しているのかを考えると、どうにも納得ができかねる。私の友人のなかだって、平気で万民のためには個人の欲求を主張するのは間違っているという人間もいる。そいつ一人の意見でみんなが困るんだと。つまり、みんな(これが誰を意味するのかというのが最大の問題点だけれど)の為には自分は犠牲になれというのだ。
 これが特攻隊についての表現にどこまでついて回る。特攻隊作戦によって全部で4000人を超える人間が自爆した。相手にダメージを与えて自爆した人間の数は多分その2%にも足りないのではないだろうか。冷静に考えてこれは明らかに無駄死にだ。大失敗な作戦だ。あまりにも効率が悪すぎる。愚行と云って良い。「国家に殉ずる」という自己満足に浸るのは勝手だけれど、間違っていた。
 この間違った考えを一体誰が公的に反省し、総括しただろうか。
 特攻隊の中には朝鮮出身者がいた、帰米二世となるはずだった本来アメリカ国籍だった日系人帰化した連中もいた。もちろん本当に滅私奉公、報国の意識に取り付かれて志願した連中もいただろうけれど、しょうがなくてその立場に立った連中もいた。そりゃあたりまえだ。人間にはたったひとつの価値観しきゃないわけじゃないからね。しかし、明らかに彼らの死は無駄な死だった。
 この国は何もきちんと振り返らない。