ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

部外秘

 今朝未明のNNNドキュメントで「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算」と「原子炉施設に対する攻撃の影響に関する一考察」という二つの資料が紹介されていた。
 前者は科学技術庁の委託で1959年に日本原子力産業会議がとりまとめた報告書だという。これはすでにウィッキペディアにも載っている。米国の原賠法にそっくりな法律を作るために、それじゃ日本ではどのくらいの被害が出るのか試算したという。
 244ページの報告書なのだけれど、衆議院科学技術振興対策特別委員会に提出されたのはなんとたったの18ページでそれ以外は存在しないかの如くに扱われたそうだ。
 1973年、報告書の概要が一般に明らかにされて、武谷三男が1976年の岩波新書原子力発電』で、これに触れているのにもかかわらず、その後は否定され、結局全文が公開されたのは1999年の6月2日になってからだという。40年近くも秘密扱いとされてきたわけだ。
 特定秘密保護法なんてものができちゃって、これから先、多分福島第一原発の真実はどんどん闇の中に放り込まれてしまうのは明らかだ。損害額を試算すると、最大で3兆7000億円で、当時の国の一般会計1兆7000億円の2倍以上になることがもうすでにここでわかっていながら原賠法のためだけに使われただけというわけで、まさに国民なんぞどうでも良い状態。
 後者に関しては今年の4月に東京新聞もこれを記事にしている。

 国内の原発が戦争やテロなどで攻撃を受けた場合の被害予測を、外務省が1984(昭和59)年、極秘に研究していたことが分かった。原子炉格納容器が破壊され、大量の放射性物質が漏れ出した場合、最悪のシナリオとして急性被ばくで1万8千人が亡くなり、原発の約86km圏が居住不能になると試算していた。研究では東京電力福島第一原発事故と同じ全電源喪失も想定していたが、反原発運動が広がることを懸念し公表されなかった。 
 1981年にイスラエル軍イラク原子力施設を空爆したことを受け、外務省国際連合軍縮課が外郭団体の日本国際問題研究所(東京)に研究委託。成果は「原子炉施設に対する攻撃の影響に関する一考察」と題した63ページの報告書にまとめられ、本紙が情報公開を通じてコピーを入手した。
 報告書は出力百万キロワット級の原発が攻撃されたと仮定。原発の場所は特定せず、(1)送電線や発電所内の非常用発電機がすべて破壊され、すべての電源を失う (2)原子炉格納容器が爆撃され、電気系統と冷却機能を失う (3)格納容器内部の原子炉が直接破壊され、高濃度な放射性物質を含む核燃料棒などが飛散する−の三つのシナリオで検証した。
 このうち、具体的な被害が示されたのは (2)の格納容器破壊のみ。当時、米国立研究所が米原子力規制委員会(NRC)に提出した最新の研究論文を参考に、日本の原発周辺人口を考慮して試算した。
 それによると、緊急避難しない場合、放射性物質が都市部など人口密集地に飛来する最悪のケースでは1万8千人が急性被ばくで死亡。ただ、被害は風向きや天候で大きく変わるとして、平均では3,600人の死亡になると試算した。5時間以内に避難した場合は最悪8,200人、平均830人が亡くなるという。急性死亡が現れる範囲について、報告書は「15〜25kmを超えることはない」と記述している。
 長期的影響としては、放射性物質セシウムなどで土壌汚染が深刻化すると指摘。農業や居住など土地利用が制限される地域は原発から最大で86.9km、平均で30.6kmにまで及ぶとしている。
 最も被害が大きい (3)の原子炉破壊については「さらに過酷な事態になる恐れは大きいが、詳しい分析は容易ではない」と紹介。福島原発事故と同じ(1)の全電源喪失では、実際に起きた水素爆発の可能性に触れ「被害が拡大する危険性がある」と指摘しており、報告書が公表されていれば、事故の未然防止や住民避難に役立った可能性がある。
 1980年代は、1970年代の二度にわたる石油危機を受け、国は原発建設を積極的に推進。国内の原発16基が運転を始めた。軍事攻撃が想定とはいえ、原子炉に重大な損害が生じれば深刻な被害が及ぶとのシナリオは世論の不安を呼び、国の原子力政策に水を差す可能性があった。報告書にも「反原発運動などへの影響」などと、神経をとがらせていたことをうかがわせる記述がある。
 原子力資料情報室の伴英幸・共同代表は報告書の存在を「知らなかった」とした上で「反対運動を理由にした非公開ならとても納得できない。テロの脅威が高まる中、原発のリスクを国民にもっと知らせるべきだ」と話している。
◆公表する理由がない
 外務省軍備管理軍縮課の話 報告書は保存されているが、作成部数や配布先など詳しい経緯は分からない。今後、公表の予定はない。積極的に公表する理由がない。
原発攻撃被害報告書 「福島」に生かされず
 軍事攻撃による原発放射能被害を予測していた外務省の報告書。水素爆発した福島第一原発事故地震津波が引き金とはいえ、報告書が指摘していた「全電源喪失」の危機がシナリオ通りに再現された。三十年も前から原発潜在的な危険性を知りながら、反原発運動の広がりを恐れて公表を控えた外務省。原発推進を掲げた当時の国策の下で、都合の悪い情報をひた隠しにする官僚の隠蔽(いんぺい)体質が浮かび上がる。 (斎藤雄介)
 「限定配布の部内資料(『取扱注意』なるも実質的に部外秘)」「外務省の公式見解でないことを念のため申し添える」…。高度な秘密性を裏付けるように、報告書には当時の国際連合軍縮課長が書いた「ことわりがき」が添えてある。
 当時、同局の審議官だった元外交官の遠藤哲也氏(80)は本紙の取材に「記憶が確かではない」としながらも「ショッキングな内容なので(非公表に)せざるを得なかったでしょうね」と話した。同氏によると、一般的に部内資料は省外への持ち出しが禁止されており、報告書が官邸や原子力委員会などに配布されていなかった可能性が高い。
 作成された2年後の1986(昭和61)年には旧ソ連チェルノブイリ原発事故が起きたが、その時ですら報告書の公表はなく、原発の安全対策に生かされることはなかった。
 当時は米ソが核兵器の開発を競う冷戦時代。科学技術史が専門の吉岡斉・九州大教授(61)は原発の軍事攻撃を想定した報告書が公表されれば「国民の間で核兵器原発が一体的に連想されることを心配したのではないか」と推測する。
 「国家と秘密 隠される公文書」(集英社新書)の共著者で、歴史学者の久保亨・信州大教授(62)も「原子力は、軍事に転用できる技術の最たるもの」と指摘する。久保教授が懸念するのは昨年12月に施行された特定秘密保護法。安全保障やテロ対策などを理由に原発に関する情報が一段と制限され「闇から闇へ葬られかねない」と懸念を示している。(東京新聞2015年4月8日)

 馬鹿にされているのは国民で、「何もかもわかっているけれど、教えない」でここまで愚弄されている。
 原子力の研究・開発・利用は、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果は公開されるべしとする、民主・自主・公開の三原則というのがあって、これは原子力基本法に規定されているなんてことを知り、主張することなんてもうとっくに忘れているわけで、知らしむべからずよらしむべしの典型。
 馬鹿にするのもいい加減にしろよ!