ほぼ足りてまだ欲 その先

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初任給

 厚生労働省が28日公表した「2018年賃金構造基本統計調査(初任給)」によると、男女合わせた初任給は、大卒や高卒など全ての学歴で前年を上回った。ここ数年増加傾向が続いており、厚労省は「景気回復に伴う賃金上昇が初任給にも波及しているのではないか」とみている。
 学歴別では、大学院の修士課程修了が23万8700円(前年比2.3%増)、高卒が16万5100円(同1.9%増)、大卒が20万6700円(同0.3%増)だった。
 大卒を産業別に見ると、広告代理店や法律事務所など「学術研究、専門・技術サービス業」が5.0%増の22万4500円だった。(共同 東京新聞2018年11月28日 19時39分)

 にわかには信じがたい厚生労働省発表ですよね?そりゃそうですよね。「賃金上昇が波及」だなんて大嘘をこいているわけですが、これが発表通りだと思っているジャーナリストがいったい何人いるのでしょうか。
 どこかで誰かが解説をしていましたが、昔に戻った程度のことだというのですが、実は大きな違いがあると私は思います。つまり、初任給を提示されるような正社員が昔ほどはいないのです。なにしろ新卒者の中でも、ハナから正社員として社員10人以上の会社に雇用されている人が全体のどれほどいると思っているのでしょうか。かなりの割合の人たちがパート、派遣だというのが実情です。彼らには初任給なんてものは存在しませんからね。ましてやこの調査のサンプリングはいったいどこから求められたというのでしょうねぇ。そこにも問題があります。各企業の回答をそのまま反映しているということでしょうか。正社員ひとりひとりに個別調査をしたのでしょうか。それによっても変わってきます。ぱっと見、「あぁ、給料上がってんだね!」と思いがちですが、そういう面で数字の裏をよく見る必要があります。
 残念ながらなんと5年前の数字が最新データですが、厚生労働省「平成25年若年者雇用実態調査」によれば、在学中を除く若年労働者(15~34歳)に占める正社員以外の割合は、中学卒で62.0%、高校卒で42.8%、大学卒で20.4%、大学院修了で12.3%で、高学歴ほど正社員以外が少ないが、現在、大学卒でも5人に1人、大学院修了でも10人に1人は正社員ではないといわれています。この5年間に正社員割合は明確に低下しているはずで、そもそもこの厚労省の数字が実態を表しているのかどうかという疑問が残りますが、初任給調査そのもののレトリックを解明するのはジャーナリズムの仕事ではないかと考えています。