ほぼ足りてまだ欲 その先

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教育

 わたしにはふたりの姉がいる。ふたりとも大学は短大に行った。当時、四年制の大学へ行く女性はそれほど多かったわけではなかった。長姉は多分1960年に、二姉は1963年に入学したのではないか。長姉は四年制の大学へ行きたがった。それでも浪人してから短大へ行った。当時女性で大学浪人をするのは珍しい方だっただろう。父親は「女は短大でいい!」といった。泣いて抗議をしていたようだけれど、許されなかった。彼女は良くそういう時に泣いた。「わたしは一生懸命やっているのよ!」と力説した。なかなか見合いをしても結婚しようとしなかったが、最後に父親が「お前は一体、どんな男なら良いんだ!」と怒鳴った。黙ってみていたけれど、随分理不尽なことをいうもんだなぁと思っていた。それでいて、長姉がオヤジ至上主義だったのはとても不思議だ。
 二姉は美大へ行きたいとかねがねいっていた。確かに彼女にはそうした面での才能があると思えた。長姉を見ていたからだろう、父親に抵抗するということをできるだけ見せずにいたようだ。そういう点では学習能力に優れていたといっても良いかもしれない。じっと耐えるタイプだから、みていて歯がゆいときもあったけれど、地道にやっていくタイプだ。短大の美大へ行った。服飾美術という専攻だったらしい。卒業してからテキスタイルの柄のデザイン事務所に通っていた。徒弟制度だったらしくて、とても暮らせる給料じゃなかったそうだ。結婚してからも素人らしからぬ染め物に精を出していて、さすがの才能を示していた。
 戦後20年も経っていた時期だけれど、父親の人生観はやっぱり明治生まれならではだったんだろうなぁという気はする。
 わたしはといったら高校在学中くらいから、オヤジの価値観に絶望をして過ごした。