ほぼ足りてまだ欲 その先

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11月25日

 2015年の小林秀雄賞受賞作である。
帰ってきた男は誰かというと、著者・小熊英二の父親、謙二のことである。
冒頭に11月24日は初めてB29の編隊が東京にやってきたと書いてあり、11月25日は19歳の謙二が出征したと書いてある。シベリアにまで連れて行かれ、彼が生きて復員したのは4年後だったそうだ。
 小熊英二が父親からとても丹念にそのライフストーリーを聞き取っている。なにしろ子供の頃に引き取られた母方の祖父母の高円寺の二軒長屋の図まで描いてある。

 私も父親の話をもっと詳しく聴いておけば良かった。なにしろ、口を利くのも嫌だった時期が長くて、ほとんどオヤジの人生について聴いた記憶がない。小学校へ入った頃に本郷に連れて行かれて、オヤジが下宿していたあたりを歩いた記憶はあるが、それがどこだったのか、全くわからない。オヤジが大学を卒業したのは昭和11年(1936年)で、2.26事件があった年の春である。翌年には日中戦争に突入してしまう。就職先がそれほどあったわけではないらしく、小さな造船所に入って、最初に担当したタグボートの図面だったか、完成写真だったかを晩年アルバムに貼っていたような記憶がある。いつ、北支へ三年いったのかも詳しく聞いていない。
 終戦を横浜で迎えたらしいことは知っているが、私が生まれた丘の上の社宅群が一体いつ作られたのか、何も聞いていない。もはや手遅れだ。