ほぼ足りてまだ欲 その先

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危うく遭難

 今回のViking Ocean Cruisesの「Viking Sky」の漂流騒ぎには驚いた。Viking Cruisesといったらクルーズ会社の中でも上から4-5番目に位置するような大人気クルーズ会社で、クルーズ料金もお高くて、めったやたらと大きな船でカリブ海のような格安クルーズを売るのとは訳が違っている。しかも、この船は竣工したのが2017年。まだ就航してからようやく3年目に入ったばかりという、この業界ではまだまだ新品といっても良いような船だ。乗客定員が930名、乗務員が550名だから、お客ふたりにひとりの乗務員がついているようなもので、それだけでも、あぁこりゃ高そうだと思う。だから当然乗客の年齢層は高くて当然だ。実際にこの航海に乗っていたのは乗客915名、乗り組み員 458名だったそうだ。船はクルーズを中止。次の航海もキャンセルされた。

 ヘリコプターで500名を救助したそうだけれど、これは相当大変だったことだろう。風が強く、気温も低い中、ビビるお客ばっかりだったはずだ。幸い、4基のエンジンのうち3基が動いたそうで、これで安定させて近くの港に入ることができたそうだ。小さな漁船でもそうだけれど、エンジンを止めたら、船はうねりや波に翻弄される。エンジンをかけて常に推進力を効かせていれば、そうそう傾かない。

 問題はどうしてこの船の4基のエンジンが止まってしまったのか、という点にある。この船のエンジンはドイツのMANの9L32/44CR が2基、12V32/44CR が2基装備されていて、これで発電機を廻し、電気を起こすことによって2軸のモーターで推進力を生じている。なんでこんなことをするのかといえば、電気推進であれば、非常に俊敏且つ細かい運転が出来るからだ。普通の貨物船ではこんな構成にすることはなくて、ディーゼルエンジンからそのままカップリングを介して、プロペラに繋げる。単純だけれど、例えば航行中にいざ船を止めなくてはならない状況を呈して、プロペラを反対に回して船足を止めようとするためには、ギアを抜いて後進にしなくてはならない。しかし、電気推進だったら、極を反対にすればすぐさま後進にすることも可能だ。南極へ行く自衛隊の「しらせ」も電気推進になっている。これなら氷に行く手を阻まれた時に、すぐさま後進して後ずさりをして、勢いを付けてぶつかっていくという操作ができる。

 Viking Cruisesはこの同型船を全部で10隻投入する計画らしく、一番船のViking Starは2015年4月に就航している。この船を含めて既に4席が就航しているわけで、このエンジンそのものに問題があるのだとすれば、これまでにもエンジントラブルが発生していた可能性があり得るはずだ。この原因によっては、Viking Cruises全体に与える影響がないとはいいきれない。

 そもそもViking Cruisesは欧州のリバー・クルーズに定評があって、この会社のリバークルーズは近年大好評で、一年前にはおおよそsold outになってしまう。