ほぼ足りてまだ欲 その先

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めおと太鼓

f:id:nsw2072:20201203005835j:plain:w360:left  「小野田勇作、三木のり平明治座三月公演」
初演はこの公演をさかのぼること10年というから、1970年かと思ったら1969年11月だってんだから、まぁ、おおよそ十年前にはなりそうだ。この時は「文七元結」が原案の「めおと太鼓」は昼の部で、夜の部はまた別の芝居だったそうだが、このプログラムの1980年三月公演は昼夜同じ演目だとしてある。
 二〜三日前のYouTube久米宏がこの本を取り上げて、この芝居ののり平の左官屋・長兵衛と、志ん朝の文七の吾妻橋でのやりとりが、こうこうこうで、ここが巧い芝居で、これがのり平のアイディア、でもって、後の志ん朝の高座の「文七元結」がとっても良くなったんだと云って、ひとしきり、自分で演じてやがんの。
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 そんなわけで、久米宏を横目で見ながら、このあたりの芝居のプログラムってのがきっとあるだろうと、検索したら、蛎殻町の住所の古本屋がこのプログラムをアップしていたというわけ。40年前のプログラムには「祝・都営新宿線全線開通」なんて名刺広告が載っている。のり平の相方はもちろん中村メイコで、文七は志ん朝。娘、お久は初演の時は十朱幸代だってというが、この時はダブルキャストになっているだけれど、写真を見ると17歳にはとても見えない、子どもだ。
 この芝居には、落語の「文七元結」にはない、長兵衛と女房おかねとの出合がついている。そこに出てくる若い浪人、早瀬新三郎を演じるのが、佐野守。知らねぇなぁと思ったら、佐野周二の次男坊、つまり関口宏の弟だ。もう74歳になるはずだけれど、一体全体どうしているんだろう。「社長太平記」にも出てくるんだけれど、やっぱりパッとしない。
 不思議なキャストには、写真入りで「銀座ローズ」「青江ママ」のお二人まで入っている。一体、なんの役でお出ましだったのかと思ったら、吉原・佐野槌の花魁役だってんです。え〜っ!でございます!銀座ローズって人は知らないけれど、この頃、青江のママは泰明小学校前の路地で、時々お見かけしましたよ、着物姿で。
 このプログラムに広告を出している飲食店の中にも、今はもうとっくの昔になくなっちまった店がいくつもある。それを見るだけでも、裏悲しい。
 もう一本の芝居は三浦布美子と志ん朝の「悪女の絵本」という初演のものだそう。そういえば、いつのなんだったか一向に思い出さないんだけれど、どこかの芝居に連れられていって、三浦布美子が出てきたのを覚えているんだが、ありゃ一体何だったんだろう。当時、東宝の人にはつきあいがあったけれどねぇ。
f:id:nsw2072:20201203015551j:plain:w360:right プログラムの後ろに、昔TBSのアナウンサーだった鈴木治彦三木のり平と対談をしている。昭和18年、戦争中に動員でいった工場の病院の冷蔵庫からバターをくすねて売ったことがあると白状しているが、当時のり平は19歳ってことだよなぁ。
 このプログラムをもっていた人は相当律儀な人と見えて、自分が貰った招待券をきちんと貼り付けてあるのには驚きましたね。

 というわけで、当時の三木のり平やら、あの辺のことを懐かしく思い出すような方々は、どうぞお読み戴くと刺激がいっぱいでございますよ。