ほぼ足りてまだ欲 その先

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社会人

 どこかの出来合スーツ屋(今時スーツをオーダーする人はそんなにいないだろうけれど)さんの宣伝か、若い男が上だけスーツ姿になって、「これで父親の気持ちが分かる」てなコピーが流れるCFがある。今時の青年諸君は就職活動の時に既にスーツになってまわっているんだから、入社を前にこんな気持ちに果たしてなるんだろうかと疑問。
 私達が就職活動をしていた時代はみんな学生服でまわっていた。だから呼び集められた会場に行くとどこの大学から来たのか一目瞭然だったのである。W大学の学生は襟にW型のバッジを付けていた。K大学は襟には何もなかった。うちの学校もあんまり知られていないがつけていた。T大学の連中の襟章はあたかも検事のバッジや弁護士のバッジの様に一種権威の象徴の様に見られていた。
 そしてメーカーに就職して研修の初日に全員に作業服・作業帽・安全靴が配られた。次の日から現場研修という夜にその全部新品のぴっかぴかのものを身につけ、鏡に映してみた。端から見れば実に弱々しく映るのだろうけれど、私は漸く遠慮しなくても良い、一人の社会人になれたかの如き気分になって誠に晴れがましかった記憶がある。それからその姿にマンネリズムがすり寄ってくるんだとは思いもしない、意気揚々たる気持ちだった。前に横たわる広大な楽しさを感じたのは、多分この時と、そして仕事から足を洗ったあの時かも知れない。次に何をやっても良いという開放感だったのかも知れないが。