ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

石津謙介

 先日、いつものところで呑んでいたら若い女性がVANとかIVYについては知らないというので、はぁ、なるほどなぁと思ったんだけれど、石津謙介については当時は、私は軽い調子で儲けやがって!と苦々しく思っていた。
 しかし、今になってつらつら思ってみると、彼が作り出したといわれているVANが提供していた様々な商品は、あの時代、つまり1960年代中頃にあって、とても完成度の高い製品だったのだ。例えばあの白い、ボタンダウンのワイシャツひとつとっても、たて糸・よこ糸を2本ずつ引きそろえて、平織りにしたオックスフォードという生地を使い、襟のデザインも、襟のボタン位置も、背中のフックのサイズも、ボックスプリーツのサイズも、実に本物そのものだったという気がする。多分(全く確証も何にもないけれど)ブルックスかなんかのパクりに違いない。それくらい本物だった。VANをまたパクったシャツを安い値段で再現した名前のわからないメーカーのものはすぐさままがい物だと見分けられた。ジャケットなんかでも横浜元町のポピーが売っているようなトラッドのジャケットそのものみたいなものがVANブランドで安く発売されていた。
 それが学生にはなかなか手が出ないが、ちょっと背伸びをしたら手が届きそうだという値段だった。あれがブランドというものなのかも知れない。それがやり方として上手かったのだけれど、それはいったい誰が考えていたのだろうか。そこまで上手い具合だったのに、どうしてその後あっという間に傾いてしまったのだろうか。
 今若者達が着ている、身体にぴたぴたなズボンのスーツはとても格好悪くて、見るのも嫌だ。