ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

介護の人材

 16日の衆議院厚生労働委員会参考人を招致して質疑があったそうだ。介護労働者人材確保特別措置法案が審議入りしていてかねて議論をしてきている。「NPO法人高齢社会をよくする女性の会」理事長で評論家の樋口恵子が参考人として出席していたそうだ。衆議院のビデオライブラリーから樋口恵子の発言を聴きながらピックアップする。

後期高齢者の樋口です(現在まさに75歳)。
 介護人材確保のための何らかの措置を執って頂くためのお願いでございます。私たちの会には勿論男性の理事もおりますが、多くは中高齢の女性で占められている会です。中高齢の女性は多く介護最前線におります。炭鉱の空気が悪くなるのを予知するために持ち込むカナリアがいると聞きましたが、私たちは介護の世界のカナリアです。コムスンは良くやってくれるのだけれどもどんどん担当者が変わっていく、その介護者から愚痴を聞くと利用者の方々からよく聞いていた。ヘルパーは働いても働いても年収150万円くらいにしかならない。150万円の年収では生きていけません、ヘルパーは現在の奴隷です、という様な手紙が届く様になりました。その挙げ句にコムスン事件です。介護人材の切迫、確保難は明確です。「持続可能な介護」を厚労省は云ってきたけれど、介護というのは地産地消があって初めて成り立ものです。その介護が崩壊の危機を迎えています。昨年の静岡での私たちの全国総会で介護を利用する家族としてこの法案を要望しようとして要望書の形にして各党にお届けしました。その中身をこの委員会においてお目通し頂けるのは嬉しい。
 そして緊急提言です。介護人材確保にかかわる介護従事者の賃金を一人一月3万円をあげて欲しいという提案です。ちょっとやそっとの賃金アップでは間に合わない。人間らしい生活を営むことのできる生活を想定していることです。
財源についても工夫をしてきました。地域支援事業費を3%を使って、という様なことを考えています。
 多くの介護労働者は金を目当てにこの分野にやってくるのではなくて、高邁な理想を持って参入して下さるにもかかわらず、辞める時にはお金がどうにもならないといってやめていかれることが多くの場合にあることを考えて第一にして提案しています。そして、この方たちが孤立して働く環境にいるという状況にあります。極端なことを云えば要介護者のセクハラにも耐えながら働かなくてはならないという現実があります。スーパーのパートの定着率が何故高いのか。人々との相談、話し合いの中で成長していくことができるというのは重要な労働環境だと思います。孤立した労働環境においてはなりません。孤立させるのは社会の責任です。介護という労働が社会での評価を上げて行かなくてはならないと思っています。署名運動を始めましたところ、年内で15万以上の署名が集まっております。12月9日にはこの署名簿を背景に大集会を持ちました。このような形で民主党が提案し、議論できるのはとても嬉しいが党派で区別するべきものではないと思っております。
 11日に傍聴させて頂きましたが、介護だけというのはどうかという議論もあるかも知れませんが医療、保育と様々なところで崩壊しております。昨日の集会では300名が集まっていましたが、もはや完全に崩壊しています。特養ができても労働者が集まりません。医師や看護婦はそれなりの賃金が払われているにもかかわらず集まらないという問題はあるが、介護はその賃金すら不足しているのが現状です。医学部受験する学生は減っているでしょうか。4月13日の新潟日報に見ると70名程度の介護専門学校で、今年の入学生は14名に過ぎないという報告があります。介護の危機的状況は他と比べようがなく、介護の現場の危機は一日も待ったが効かないという状況です。

  • 介護する人が幸せでなければ介護される人も幸せにならない。
  • 人間を介護する人には人間らしい待遇が必要。
  • 人間しかしない介護をどう位置づけるかはその社会の品格である。

 誠に仰る通りで、訪問介護の現場はその要素のほとんどをホームヘルパーがいて初めて成り立つもので、たった一人で介護利用者の現状を判断しながら介護労働に従事するという状況にありながら例の「いわゆる」改正によって現場では交通費までカットされ、それまで他の地域から通って従事してくれていたヘルパーの皆さんはとっくに辞めてしまわれている。これでは暮らせないと云って宅配便に転職した女性もいる。全く新しい人手が集まらないから、もう辞めようとする年齢に達してきた人たちにも週に数回でも良いから仕事をして貰えないかという声が出てくるし、休んで旅行に行こうとするとずっと以前から予定しないと出かけられなかったりする。このまま放りっぱなしにしておいたら早晩介護労働者は明らかにいなくなる。外国人の労働者で埋めれば良いではないかと主張する人もいる。その為に今から現地に学校を設けている経営者も良そうだ。勿論そちらの可能性も検討する必要はあるだろう。しかし、本来的には今の現状をそのままにして良い訳がない。
 この日は他に遠藤久夫(学習院大学経済学部教授)、村川浩一(日本社会事業大学教授)、清水俊朗(全国福祉保育労働組合中央本部書記次長)が参考人として出席している。研究者お二人が与党推薦で残りのお二人が野党推薦なんだなと実にわかりやすい構成。

  • 遠藤久夫:学習院大経済経済政策 、応用経済学 、医療社会学横浜国立大学(経済学部 、経済学科)卒、慶應義塾大学修士経営管理研究科 )、一橋大学大学院博士課程単位取得退学。その後、東海大学政治経済学部助教授を経て現在に至る。(平成15年度〜平成18年度学生部長)。「後期高齢者医療の在り方に関する特別部会」委員。「介護事業運営の適正化に関する有識者会議」座長。:こんなことをいうのもなんだけれど、「それ」系の先生。具体策のほとんど見られない対応策がとられてきたことの説明にしかなっていない。頭の良い人はそれでも多くの意味を含めたのだというのだろうけれど、「国民から信頼される介護保険制度の構築」だなどとまったくどうにでもとれる話に終始。
  • 村川浩一 日本社会事業大学福祉計画学科, 教授:昨年10月から田中滋(慶応義塾大学教授)を座長とし、池田省三(龍谷大学教授)、堀田聰子(東京大学助教)とともに「社会保障審議会・介護給付費分科会介護サービス事業の実態把握のためのワーキングチーム」のメンバー。介護労働者がいささか減少しているという程度の認識でおられることに驚く。
  • 清水俊朗:全国福祉保育労働組合書記次長:しょうがい者系の支援者出身