どんな状況の時でも前後の見境なくがむしゃらに突き進んでいくという姿勢は極上の評価を得るということになっているんではないか。
その際、例えばそんな行動について冷静に考えたら合理的ではないという判断が下されてもおかしくないとしても、それは無視する。それが「よくやる奴」だという評価を得るんじゃないか。
何時までにこれだけのものを揃えろ、といわれてそれがいかに不可能に思えたとしても、どんなことをしてもそれをそろえるのが部下として最も役に立つ部下だという評価があるんじゃないのか、たとえそれが他から盗んできて揃えてあったとしても。
情け容赦を持つものは女々しい奴だ、とする評価があるのではないのか。「すみません、風邪を引いてしまったので、申し訳ないのですが、今日は休ませてください」といったら「張ってでも出てこいっ!」という上司はスパルタだとはいわれたけれど、心の底からバカにしてはいないのではなかっただろうか。
「質実剛健」という言葉が本来の意味を失って、蛮勇を奮って客観的に見てばかげていることに熱中することを良しとする雰囲気に走ってしまうのではなかったか。ちょっとでも立場の弱い人間に情をかけるのは男子たるものの覚悟に欠けるとする価値観が大好きではないか。「武士の情け」とは必死に生き残ることを助けるのではなくて、このままだったら敵に捕まりそうなものは手にかけてしまうことだと思っていたりする。