ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

もぐりの場所

 渋川の火事でそこで暮らしていた人たちのうち10名が死亡するという事件があった。「静養ホームたまゆら」という施設名を見るとなんだか特別養護老人ホームの名前のように見えないことはないけれど、その実は全くなんでもないただの家(それも不法建築物)で、たまたま10名を超える人たちが集まって暮らしているだけだ。これを経営していたのはNPO法人だというけれど、この法人の認可はどのような条件で実施されていたのかについてはあまり言及されていない。
 1999年9月に認証されたこのNPO法人NPOデーターベースで見ると

 この法人は、「福祉の里」づくり・ヒューマンデイサービス・老人介護施設・心身障害者の社会復帰の授産作業所・福祉農園・地域交流ホーム・痴呆老人のグループホーム・青少年健全育成主眼の武道館・健康遊歩道等の諸施設を福祉の里内に展開し、その運営を行い、広く福祉に寄与することを目的とする。

と書かれているから本来であれば彼らが運営するこの施設はこうした施設を目指していたと見える。
 しかし、この施設は旅館でもなければアパートでもなければ、グループホームでもなければ民宿でもないし、一体何だと表現すればよいのかもわからない。
 今回の一連の報道を見ていると墨田区の保護課はこれ(なんのジャンルの規定にも合致していないのだから「施設」というのもおかしい・・)をいわゆる「養護老人ホーム」に代わる施設として措置入所者を送り込んでいたらしいことが判明している。住民登録を墨田区のままにして墨田区生活保護対象者としてそこで暮らしていたということになる。2000年に介護保険ができ、社会福祉構造改革として高齢者の介護事業が「措置」から「契約」に大きくその姿を変えたときに、事業者からも関係官庁からも大きな声で、「これからの日本の高齢者介護は大きく変わる」と宣言されていたことはまだ記憶に新しい。
 その時に、「措置入所」によって救われてきた人々は頭の片隅に追いやられたといっても良いだろう。もちろん生活保護で暮らしてきた人たちも特養で暮らす人たちもおられる。しかし、養護老人ホームの絶対数は足りない。尤もなにもかも施設は足りていないのが現状だから様々な現場の解釈を経て、いずれかの施設に潜り込んでどうにか辻褄を合わせているといって良い。
 しかし、どう考えても辻褄をあわせられない状況が出てくる。

区が生活保護を支給している「長期施設入所者」は2月20日現在、352人。都道府県別では▽東京156人▽茨城109人▽群馬34人▽千葉16人▽埼玉15人▽栃木9人▽神奈川8人▽富山2人▽山梨、長野、香川各1人−−と北関東を中心に全国的に広がっている。(毎日新聞2009年3月21日11時57分)

 墨田区内では収容しきれない。もちろんこんな事情は墨田区だけの問題ではなくて、人口が集中している自治体ではどこもかしこも同じような状況にいる。区内にこうした人たちを収容できる施設は全く払底していて全ての人たちを収容できる施設を設けようとすると予算的にも物理的にもできていない。つまり、法としてシステムが構築されていてもそれを施行するだけの実態が存在していない。
 実はこうした状況にあることは「社会福祉構造改革」以降の明らかであって、誰もが知っていた。それぞれの人を担当していた介護保険関係の役割を果たしている人たちにとっても、この場所がそうしたひとたちが暮らす場所としてはふさわしくないことがわかっていても、他に施設が探せないのだから仕方がないとしていたに違いない。
 こうした需要はこれから先どんどん高まるのは火を見るよりも明らかで、このままにしていたらどんどん「施設」といえないところで命を失っていく高齢者が続出していくだろう。
 政府与党は「高負担高福祉を受け入れるんですか?」と国民を脅かしているけれど、現状の国費横取り特殊法人やら、どんどん目減り公共事業やらで、ずる賢い連中を守り続ける政策はもうたくさんだと私たちは意思を見せる必要があるだろう。

追記090324:
 毎日新聞(2009年3月21日23時55分)によると「無届け施設は厚生労働省の2007年2月調査で377施設にのぼり、全国の有料老人ホームの約1割に達している」が「厚労省都道府県に対し、施設の実態把握と届け出の徹底を数回通知したが、都道府県や市町村の側も担当者が少なく、十分に実態を把握できていない」としていて「昨年1月の東京都の調査では、都内の生活保護受給者で有料老人ホームや高齢者向け住宅に入所していたのは674人で、そのうち都内在住は158人に過ぎなかった。他県の施設には516人が入所し、内訳は▽茨城236人▽埼玉83人▽群馬64人▽千葉63人▽静岡41人▽山梨12人▽栃木10人−−などだった」と報告している。