帰りに八重洲のブックセンターによる。恵比寿の本屋さんはすっかりなんだかわからない、いやむしろ子ども向けに特化してしまったようで、すぐさま山手線で東京駅に出る。
- 作者: 鶴見俊輔上坂冬子
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2009/04/15
- メディア: 新書
- 購入: 1人 クリック: 12回
- この商品を含むブログ (31件) を見る
彼女のデビュー作は「思想の科学」から賞をもらって出ているのだけれど、この対談を読み進むうちに鶴見に比べて彼女の思想の大きな違いは、現実的といえばそういえるのかもしれないけれど、そこには「理想」というものが欠落しているのではないか、という気がしてきた。例えば、やられたらやり返すのは普通じゃないか、というのでは「高邁さ」というもののかけらも存在しない。
どうもこの私が彼女に対して抱く感情はかつてどこかで、いらいらしながら、それでもこうした感情を持つ人というのはどんなことがあったとしても頑としてその基準を見直すつもりもない、という状況を見てきたような気がする。それがどこで相手は誰だったのかを確実に取り上げることができないけれど、あちこちで出会ったような気もするのだ。
張作霖爆殺の首謀者といわれる河本大佐についても戦後(1965年頃?)その娘達と旧満州に旅をしたときに河本が娘に出した手紙を見て河本大作、とんでもないと一概に言えない、などと発言している。この種の価値観というのは公的人間としての歴史上の人物の評価から大きく逸脱しているもので、誰でも、どんな人でも自分の幼い娘に対して良き父になるに決まっているのであって、それを歴史的に語るときに持ち出すのはまったくもって「ずれて」しまっているのに。孫娘の祖父への想い出発言によって東条英機への価値観を変えてしまうようなものだ。
鶴見俊輔は戦争前にハーバードに行っていて交換船で戦中の日本に帰ってきた。負けるのはわかっていたけれど、負けたときに負けた母国にいたいという気持ちだと、「日米交換船」の中でも語っていたが、上坂はそれが理解できないらしい。私にはこうした感覚を持っていた鶴見の心情がわかる。うまい例が見あたらないけれど、どうせなら見下す位置ではなくて見下される立場に肩入れしたい、という気持ちに似たような話といっても良いかも。
鶴見は戦後アメリカに足を踏み入れていない。戦後すぐにスタンフォードから来ないかという話があったのだけれど、神戸の米国領事官が許可を下ろさなかったのだという。一度自分を拒否した国には二度と足を踏み入れない、というのだ。鶴見らしい話だ。
- 作者: 中井久夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2009/04/08
- メディア: 文庫
- 購入: 4人 クリック: 46回
- この商品を含むブログ (35件) を見る
断念したもの
- 作者: 原武史
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/12/10
- メディア: 文庫
- クリック: 6回
- この商品を含むブログ (16件) を見る
- 作者: ケネスルオフ,高橋紘,Kenneth J. Ruoff,木村剛久,福島睦男
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/04/16
- メディア: 文庫
- 購入: 3人 クリック: 5回
- この商品を含むブログ (13件) を見る
- 作者: 西川祐子,杉本星子
- 出版社/メーカー: 日本図書センター
- 発売日: 2009/02/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る