ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

外国人研修生・実習生

 実質的に日本の製造現場を支えていることにいつの間にかなってしまっている外国人研修生・実習生制度はいつまで経ってもその劣悪な労働環境を解決する動きが国会でも語られることがない。この制度がなくなってしまうと確実に人手不足に陥り、なおかつこの制度の正当な適用を監視していくシステムを作り出すと製造現場は成り立たなくなるといううまい言い訳で、外国人から搾取することに対して目をつぶり、知らん顔をしているのが私たちのこの社会の現実。
 元締めである財団法人国際研修協力機構(JITCO)は当時5つの省が相乗りで作り出した団体で、これは外国人労働者斡旋機関ではない、外国人に日本の技術を習得して貰って国に帰ってそれを役立てて貰うシステムだと強調すればするほど実態とは乖離しているというのは日本中どこにいっても誰でもが理解していることなんだけれど、それを取り上げて糾弾する国会議員はいない。なんでか。得なことはひとつもないからである。票には繋がらないどころか、票を失いかねないものな。
 今年の4月9日に法務省入国管理局が発表したところ(こちら)によると「平成20年(2008年)中に「不正行為」に認定した外国人研修生・技能実習生の受入れ機関は452機関(549件)で前年の449機関を上回り,過去最多」なんだそうだ。「「研修生の所定時間外作業」に169件,「労働関係法規違反」に155件,「名義貸し」に96件を認定しており,この3類型で全体の76.5%を占めるという。
 これだけ読むと前年比ではそんなに増えてないじゃないかと思うけれど、実はそのまた前年、2007年が229機関だったときくと、倍になっているわけだ。ひょっとすると2009年の不正行為件数が発表されたらとんでもない数字になっているのかも。これは判明した件数に過ぎないのだから、判明していない件数がどれほどになるのか、想像するだけでぞっとする。
 外国人研修生はここ3年ほどはJITCO経由では毎年7万人ほどがやってきているらしい。その他のルートを使ってやってくる研修生もいるということである。一年間の研修が終了すると労働者として働くことになる実習生として二年間働くことができる。そのうち5万人ほどが実習生という滞在資格に移行しているようである。
 受け入れる方も「安い労働力」として理解している企業や組合もあるわけだけれど、やってくる方も安い労働者かも知れないけれど自国の物価に比べればまだましだとやってくる労働者がいることも事実だし、中には受け入れ先から逃げ出して不法滞在者となる人がいるのも事実だ。
 JITCOが先日発表したところによると「2008年度の外国人研修生・技能実習生の死亡者は34名」だったそうだ。18-9万人いるだろう外国人研修生・実習生のうちの34名だからとても少ないように思えるけれど、前年度の志望者数が21名だったということから考えると驚くべき数字だといっても良いのではないだろうか。もうひとつ驚くべきは34名の死者のうちそのほぼ半数の16名が「脳・心疾患」がその死因だと統計されている点である。
 6月18日に衆議院を通過した法案のひとつに出入国管理及び難民認定法改正案が入っている。今国会で可決される見通しだという。この中では一年間の研修期間ではまず4ヶ月間の座学の後8ヶ月間の研修を受け、一年間単位の技能研修を二年間受けることができるというものだ。
 それでも基本的なスタンスが大きく変わっているわけではないので、今後とも基本的に「安い労働者」という認識で捉えられるであろうことはあまり変化もないだろう。
 真剣に非熟練工が従事する分野についてもまごう事なき外国人労働者の受入として法制度化していかないとこれは立派な奴隷制社会の容認となってしまう。
 本年3月21日に第一東京弁護士会が国に求めた意見書の冒頭部分。

(1 「研修」の在留資格は、出身国への技術移転という本来の目的に沿った運用が可能な制度となるよう、原則として企業単独受入型に限定し、また、研修のうち実務研修については労働関係法令を適用し、第三者的な監督機関を設立するなどして研修生の保護を行うことができるよう法令を改正すること。


(2) 技能実習制度を廃止すること。


(3) 研修・技能実習制度が、いわゆる単純労働者の受け皿となってきた実態に鑑み、単純労働者の受入れについては、その受入れを前提とした在留資格を創設して外国人を受け入れることの是非、受け入れるとしたときはその範囲をどのようにするかなどについて全国民的な議論を行って法改正の要否を検討すること。その結果、受け入れを行うとすれば、単純労働者の確保という視点のみではなく、入国した外国人の労働基本権、教育を受ける権利などの人権を保障し、多民族多文化の共生する社会を実現するという観点から制度設計を行うこと。