東京・港区の飲食店などで就労資格がないのに働いていたとして、ミャンマー人の男女9人が逮捕されました。
ミャンマー人のミン・カウン・ニュン容疑者(25)ら男女9人は去年12月から今年7月にかけて、就労資格がないのに港区の飲食店などで働いていた疑いが持たれています。警視庁によりますと、ニュン容疑者らは技能実習生として来日しましたが、実習先の建設会社などから失踪していました。取り調べに対して9人とも容疑を認めていて、「日本は稼げると聞いて技能実習に来た」「同僚から嫌がらせを受けて失踪した」などと話しています。ニュン容疑者らは時給900円ほどで働いていて、月に約20万円を稼いでいました。警視庁は仕事をあっせんしたブローカーがいるとみて、詳しい経緯を調べています。(ANNニュース2018/11/08 11:57)
不法就労外国人が逮捕されました、チャンチャン!で終わりじゃない。このニュースの裏には大きな問題が隠れている。「外国人技能研修・実習生」は労働者じゃない。研修をして技能を身につけ、自国に帰ってその技能を生かして自国の技術の向上に資するための制度である。いったいこの国のどこに彼らの国に技能を持ち帰って貰うという意識で彼らを使っている経営者がいるというのだろうか。格安の労働の手としてしか認識していない。逃げられちゃいけねぇと思っている雇い主だっている。つまり後ろめたい雇用関係になっているということを認識している。あ、いけね、雇用じゃないんだった。
このシステムについては、これまでここでも随分書いてきた。彼らの送り出し側には彼らのアレンジをするという名目で彼らから金を取って送り出している連中がいて、日本にも彼らを受け入れる組織が形成されている。本当はそういう連中が排除されなくてはならない。
低賃金ではそれらの組織に対する借金を返済できないから、より高い賃金を求めて失踪するが、そこにはまた彼らに仕事を斡旋するブローカーが存在する。そこでも彼らは上前をはねられる。この時点では彼らは技能研修・実習生という滞在資格から逃げてしまうので、その途端に不法滞在者となる。表には出られない存在となってしまうので、その後の雇用関係については野党側の言いなりになるしかなくなる。
逆に、「不法滞在、上等!」ってんでその気でやってくる連中だっている。技能研修・実習生としてやってくるけれど、すぐさま逃げちゃう。即、より高い仕事を求めて行く。
技能研修・実習生は2017年に7,000人を超し、2013年からの5年間では延べ2万6千人が失踪、2018年上半期では既に4,000名を超えている。つまりこの制度はとっくの昔に破綻している。しかし、それでも雇用側、あ、いや技能研修受け入れ側、にとってはこの制度は安価な労働力である研修生は美味しい存在だった。面倒なのは期間が限られていたことだ。その期間が過ぎれば、彼らを離して、新たな人間を受け入れなくてはならない。
つまり、日本の単純労働は大嘘つき労働環境によって成り立っている。嘘つき経済なわけだ。それでいて、大企業の多くが内部留保をため込むだけため込んでいる。これは明確に政治の怠慢に他ならない。あ、いや、企業が儲けるように意識して怠慢になっているということだ。
この制度を止めると、成り立たない産業があり得るんだということをいう人がいるんだけれど、それこそ欺瞞の産業なんだね。それでなり立たないのであれば、もう辞めるしかなくなる。それをどうするのか、を考えるのが行政の仕事で、嘘で成り立つ経済に支えられる国家は、結局嘘の国家ということになる。
一方、私たちは消費をするときに、いかに安くて良いものがないか、探している。概ね妥協をして安いものに消費する。例えば、美味しそうな630円の弁当と、まぁまぁな330円の弁当があったら、私はなんの躊躇もなく、330円のまぁまぁな弁当を買うだろう。ということはその弁当を作っている人たちは(それだけを作っているわけではないだろうけれど)630円の弁当を作っている人たちに比べたら収入が低いので、賃金も低くしないとやっていけない。だから、そういう安価な労働力を求める。これは話が逆で、より正常な賃金を実現していくことで労働契約も健全化を図っていくことができる。
やろうとしなければいつまでも「嘘経済」の上に成り立つ「嘘国家」である。