ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

しかたがないから

 それでは仕方がないから白状をしてしまうけれど、私は開高健という人はベトナム戦争ベトナムに貼り付いて取材している、今でいうフリーのジャーナリストだとばかり思っていたのである。そりゃまぁ、しょうがないだろう。自分でも当時はベトナム戦争についてなにかを感じないでいられるような年齢ではなかったわけだし、ましてや学生でもあったし。
 で、今その本はうちの書棚のどこかにあるのか、実家の古い書棚に未だにあるのか思い出せないけれど、「青い月曜日」かなんかを読んだんだと思う。多分「白いページ」は読んでいないと思う。
 その次に読んだのはなんと「オーパ」である。この膨大なシリーズが文庫本になってからのことだ。それは私がフライに手を染めた頃に期を一にしているはずだ。だから、彼がアマゾンにとんでもなく大きな鱗を持つ魚を釣りに行ったとか、中国の奥地の湖に馬鹿でかいスプーンを「サンスイ」に作らせて持っていった話なんてのは全く興味がなかった。そのかわりアラスカに釣りに行ったキングサーモンの話だとか、英国に行って川そのものが流域のそれぞれのお宅の私有地になっているので、お願いして入らせて貰って釣るだとか、ふとっちょコロコロの彼だと滑稽になってしまう英国のツィード生地のジャケットを着て立ち入る川のフライ・フィッシングの様子だとかが楽しかった。つまり、私もどんなに凝ってあの種のジャケットにニッカボッカースで釣りに行っても格好悪いのだと気がついたので、それからフライを止めたんだ、といったらちょっと格好良いかもしれないな。
 つまり私の開高健ベトナム従軍記者であり、川釣りのレポーターだった。多分彼が理想に思っていたのはErnest Miller Hemingwayだろうが(簡単に結論づけるなと云う声が聞こえてくる)、人に受けようとするところが楽しい分だけ距離が短い。